『超かぐや姫!』をみたので感想。新年早々、今年のベストアニメ映画か!というような快作です!
いまよりちょっと先の世界、日本列島。父と死別し母との不和から家を飛び出し東京で暮らす高校生の少女、酒寄彩葉。学費と生活費をアルバイトで稼ぎながら学業でも優秀な成績を修める彼女の息抜きは、推しであるAIライバー、月見ヤチヨの配信を眺めたり、彼女の運営するVR空間「ツクヨミ」で友人とゲームを楽しむこと。疲れ果てながらもなんとか日々を過ごす彼女だったが、家の前の電柱が突然光り輝き、中から玉のような赤ん坊があらわれる。行きがかりで赤ん坊を拾った彩葉だが、赤ん坊はぐんぐんと成長して女子高生くらいの見た目になり、『竹取物語』の連想からかぐやという名前で呼ぶようになる。かぐやと一緒に「ツクヨミ」でヤチヨのライブをみるが、そこで、ヤチヨはコンテストの開催を発表。多くの登録者を得たライバーとコラボライブをするという。かぐやはヤチヨと一緒にライブすることを目指してライバー活動をはじめ、彩葉もそれに巻き込まれることになる。
スーパーアニメーターとしてその名も高い山下清悟の初の長編監督作は、『竹取物語』をモチーフに、SF的な仕掛けやVR空間でのライブやアクション盛沢山の、サービス精神満点の娯楽映画。アニメーション制作は『ペンギン・ハイウェイ』のスタジオコロリドと、山下が代表を務めるスタジオクロマト。スタジオコロリドはこれまでも『泣きたい私は猫をかぶる』や『雨を告げる漂流団地』などオリジナルのアニメ映画企画を放ってきていて、それらはチャレンジングであったもののやや精彩を欠いている感もあったが、この『超かぐや姫!』で一気に飛躍したといっていいでしょう。
Netflix独占配信ということで相当の資本が投下されたのではないかと推察するが、画面はとにかくゴージャスで、キャラクターがとにかく小気味よく動いて2時間20分超という長尺ながらまったく退屈しない。時にオーバーな日常芝居や、コミカルに変わる表情も印象的で、彼女たちが過ごす日常の楽しさみたいなものがフィルムに刻まれている。
永江彰浩とへちまによるキャラクターデザインはキュートで、VR空間のアバターはなんとなくVtuberっぽい感触をよく表現していると思う。ボーカロイドPによる新曲ないし既存の楽曲の参照や、『フォートナイト』や『APEX』、あるいは『リーグ・オブ・レジェンド』を想起させる劇中ゲームなど、ユースカルチャー(という表現が適当かは微妙だが)への目くばせを随所に感じさせ、全体的に「いま」っぽい意匠が詰め込まれている。しかもそれがなんというか嫌味になっておらず、それらのカルチャーに馴染んでいないわたくしのような観客にもノイズにならない形で作品のなかに消化しており、そのバランス感覚がお見事。
VR空間でのライブや、劇中ゲーム内でのバトルアクションもさえていて、それらが手書き作画で描かれているのがうれしい。VR空間での殺陣は外連味たっぷりで、所謂Web系アニメーターとして鳴らした山下の署名のようにも感じられる。
SF的なガジェットでいえば、VR空間に入るためのデバイスとしてコンタクトレンズ(ないし眼鏡)が用いられているが、これがよい感じの近未来感を演出しつつ、瞳の色が変わるとVR空間にダイブしているのが視覚的にわかる、優れた仕掛けだった。終盤に明らかになるかぐやとヤチヨの関係も素朴に驚きがあって、単に「楽しいシークエンス」の連続ではなく、お話の水準でもきちんと驚きを与えるのだというサービス精神を感じた。異様な情熱で勉学に励む彩葉だが、それが結部できちんと活きてくるのは感心した。
とにかく「いま」という時間を凝縮して、それを見事なエンターテインメントとして昇華したこの作品が、わたくしはとても好きです!


