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吸血鬼を憐れむ歌────『罪人たち』感想

罪人たち

 『罪人たち』をみたので感想。

 1932年、アメリカ合衆国、ミシシッピ州。シカゴの大ギャング、アル・カポネのもとで働いていたという黒人の兄弟、スモークとスタック(マイケル・B・ジョーダン、一人二役)。白人から買い取った建物でバーを開店しようともくろむ彼らは、オープン日にあわせて従兄弟のサミー(マイルズ・ケイトン)を誘って演奏させようとする。サミーは牧師の息子で、傑出したブルースマンであった。すぐれた音楽は時を超え、あらゆる魂を震わす。それに導かれるように、招かれざるものたちがバーにひきよせられてゆく。

 『ブラック・パンサー』のライアン・クーグラー監督による、ブラック・カルチャーにフォーカスをあてたアクションホラー。公開当時はスルーしてしまったのだが、アカデミー賞ではあのポール・トーマス・アンダーソン監督の『ワン・バトル・アフター・アナザー』を抑え最多16部門でノミネート(『ワン・バトル~』は13部門)という世評の高さにビビり、後追いで配信でみたのだった。

 ギャング風味のマイケル・B・ジョーダンからなんとなく犯罪映画風の序盤が、おおよそ半分くらいのタイミングでいきなり吸血鬼ホラーアクションに変調、そして最後にまた犯罪映画に戻ったかと思えば時間を飛ばしたエピローグではかなりしっとりした雰囲気になる。この予測不可能な展開に素朴に驚きながらみたのだが、こうした目まぐるしいジャンルの越境のなかで、音楽がつねにキーとして大きな役割を果たしていて、全体の印象としても音楽映画といっていいのかもしれない。

 全体のハイライトは、言うまでもなく、酒場でのサミーの演奏で過去と未来が混交しながらジャンルミックス的な音楽のカーニヴァルが展開される中盤だろう。このあたりは映画館で体を揺らして大音響に身をゆだねられたらさぞ気持ちよかっただろうと歯噛みすることになった。

 吸血鬼の造形は、招かれない限り家には入ってこれない、ニンニクが弱点、木の杭で打たれると死ぬ…等、なんとなくクラシックな感じを踏襲しているが、なぜか音楽に通暁し吸血鬼化するとアイルランド音楽にノリノリで興じるようになるのがおもしろい。そもそもの目的もサミーの天才的な音楽センスへの執着だったりして、このあたりの白人によるブラック・カルチャーの収奪を想起させるような暗喩的な構図は結構おもしろくみた。

 中盤にかなり印象的にでてくるネイティブ・アメリカンの吸血鬼ハンターは後で出番があるのかとおもえばそういうことはなく、しかし精悍なたたずまいがかっちょよかったのであった。