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「古層」を超えて普遍宗教のほうへ────飯田泰三『日本政治思想史講義』感想

日本政治思想史講義 ――『丸山眞男講義録 第四冊』を精読する (筑摩選書)

飯田泰三『日本政治思想史講義』を読んだので感想。

 本書は、2004年に法政大学で行われた講義を書籍化したもの。全22回構成で、基本的に15回になっている現在の大学の講義とは隔世の感あり。

 著者は丸山眞男門下で、長谷川如是閑や吉野作造などの選集・全集の編集にかかわった人物。わたくしはいままで著作を読んでこなかったし名前も知らなかったのだが、偶然Twitterでみかけたことをきっかけに手に取ったのだった。

 本書の副題に「『丸山眞男講義録 第四冊』を精読する」とあるように、講義のサブテクストとなった丸山の講義録をもとに議論が展開されているようだが、講義録が手元になくても本書の議論を追うことに支障はない。「はじめに」を読む限り、圧縮された丸山の議論を咀嚼して再提示しているような趣。

 『古事記』の時代から鎌倉仏教までをたどってゆくのだが、日本列島における国家の形成を『古事記』をくわしく読み解きつつ論じていくあたりは、わたくしがいままで読んだことのない感じの雰囲気で、単純に『古事記』のイントロダクションとしても勉強になった。

 その後、仏教が流入してくると、仏教以前の「古層」と仏教とのコンフリクトが主題化されてゆき、鎌倉時代の新宗派の出現を、ヨーロッパキリスト教における宗教改革に比するモーメントとして評価する。

 わたくしの日本仏教史の理解は立川武蔵『日本仏教の思想』にほぼほぼ負っているのだが、同書でも鎌倉時代を一つの画期としていた。しかし、それは鎌倉期に大衆化することで精緻な世界理解の体系性を放棄し、思想としての強度を失っていく、いわばネガティブな転換点として…だった気がする。読んだのは10年近く前なのでうろ覚えなんだが…。

 一方の本書は、親鸞、道元、日蓮の思想を、それぞれの力点に違いはあれど、仏教を日本の土着性の上で再解釈したことで、しかし普遍的な真理を立ち上げようとした試みとして高く評価し、その延長線上に戦国時代の一向一揆を置く。一向一揆の鎮圧をもって、普遍宗教的な志向をもった仏教の流れは絶たれ、江戸時代に葬式仏教化し、現代にいたるというわけだ。

 この、普遍宗教としての強度は、立川がネガティブに評価した大衆化と表裏一体というか、評価の力点を変えるだけで価値が変わってくるという好例だなと感じた。そのあたりが本書の読みどころでしょうか。表紙も親鸞だしね。