アニメ『十二国記』「風の海 迷宮の岸」篇をみたので感想。
十二国の世界で王として生きることを決めた陽子は、世界の中心、黄海を訪れる。そこで、陽子と同じく現実世界=蓬莱で生まれて十二国の世界にわたり、一度は使命によって王を選んだものの、王とともに消息を絶ってしまった麒麟、泰麒のことを知る。そのころ、泰麒=高里要は、蓬莱にいた。十二国の世界にいたころの記憶を失った高里の周囲では、彼に害意を持つものが次々に悲惨な死を遂げてゆく…。
小野不由美による大河ファンタジー小説のアニメ化。原作の該当部分は1993年刊行。最新刊の『白銀の墟 玄の月』によって、泰麒と戴国の物語に一区切りついたいまとなっては、まさにそのストーリーラインの始点に位置する挿話。『白銀の墟 玄の月』の刊行のときに一気読みしたわたくしにとっては、全体のなかでも単独での魅力に欠ける挿話という印象をこの「風の海 迷宮の岸」に持っていたのだが(それはこの巻がつまらないのではなく、ほかの巻がおもしろすぎるのだ!)、アニメになってみるときちんとユニークな魅力をもったセクションになっていて感心した。
原作との大きな差異は、まず黄海を訪れた陽子と景麒が、過去の出来事である泰麒にまつわるエピソードを聴く、という枠物語的構成になっている点、そして原作においては前日譚的なスピンオフである『魔性の子』からも挿話を借りている点だろう。それにともなって、陽子と別れ現実世界に帰還した杉本が、両者をつなぐブリッジのような役目を果たす。
陽子も泰麒も十二国の世界のことを知らず、ゆえにこの世界の摩訶不思議な道理を知るごとに驚くわけだが、この、世界の手触りが次第にわかってゆく感じこそがこの「風の海 迷宮の岸」篇の魅力なのだなというのをアニメを通じて改めて感じた。少なくともアニメには十二国の世界の不可思議さへの驚きが十二分に表現されていると感じる。作品世界に対する驚きの感度の鋭さは、脚色を務めた會川昇がのちに手掛けることになる『鋼の錬金術師』のアニメ版なんかとも通じる。
泰麒によって王に選ばれる驍宗を演じるは故・藤原啓治。ひょうひょうとしたなかに確かな威厳を感じさせる芝居は、つくづく巧いと感心させられる。釘宮理恵によって命を吹き込まれた泰麒も実にキュートだし、女官・蓉可を演じるゆかなもはまり役。改めて幸運なアニメ化であったことを思い知るのであった。
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