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王の暗く長い影────アニメ『十二国記』「東の海神 西の滄海」篇感想

十二国記 DVD BOX4 「東の海神 西の滄海」

 アニメ『十二国記』「東の海神 西の滄海」篇をみたので感想。

 慶国の王、陽子は、同じく蓬莱の出身である雁国王、尚隆を訪ねる。尚隆は、「もう一人の自分」と形容する、かつての叛臣、斡由の墓を陽子に案内する。逆臣として伝えられる斡由とは、いったいいかなる人物だったのか。尚隆は陽子に、斡由が処断されるに至った経緯を語るのだった。

 アニメ版『十二国記』のラストを飾る挿話。本来であれば、「黄昏の岸 暁の天」へと続き、そこからアニメオリジナルの決着を迎えるはずだったというが、それは実現せず、やや半端なところで終わっている。「風の海 迷宮の岸」篇で『魔性の子』から引いたエピソードを挟むなど布石が打たれていただけに、すこし残念ではある。

 2001年刊行の『黄昏の岸 暁の天』から18年の時を経て、『白銀の墟 玄の月』をもって原作本編は一応の完結をみた。同作は相当力のはいった作品だったし、自身の構想ではないオルタナティブな結末をアダプテーションというかたちであれ見たくはなかった、という作家・小野不由美の自負を感じさせる経緯ではある(真相はわからんが)。とはいえ、わたくしとしては會川昇という脚本家がどういう結末を用意していたか、とても気になるのだが…。

 さて、わたくしは『白銀の墟 玄の月』に深く満足はしたものの、本来はもっとちがう結末が『十二国記』というシリーズに用意されていたのではないかという気がしていて、それは具体的には、陽子と尚隆という蓬莱出身の二人の王が対決するような線があったのでは——つまり尚隆がラスボスとして立ちはだかるのでは——という予感をもっていた。その予感の根本にこの「東の海神 西の滄海」の挿話があることは言うまでもない。

 しかし原作で抱いたその予感は、アニメ版の印象とはぜんぜんちがうもので、それは尚隆が陽子に過去を語るという形式によって、尚隆も陽子も「ありえたかもしれない自分」を他者のなかに読みこみ、時に煩悶する王、というかたちで両者を結び付けてみせた脚色によるところが大きい。圧倒的なカタルシスという点では「風の万里 黎明の空」に譲るが、しかし豊かな余韻を残すこの挿話が結部に置かれたことは、意外と幸福なことだったのかもしれない。

 

 

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