宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

『ゼロ・グラビティ』 宇宙に放り出される、極限の90分

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 『ゼロ・グラビティ』を3D・字幕版で鑑賞。前評判にたがわぬ、素晴らしい映画だった。超濃密な90分。90分間、極限状態の宇宙飛行士の疑似体験をあますことなく味わった。映画の面白さのひとつは、普通に生きていたら決して体験しないであろう経験を疑似的に体験できることだと思う、と『キャプテン・フィリップス』の感想記事でも書いたけど、『ゼロ・グラビティ』は、それをより先鋭化している気がする。普通生きていたら絶対体験しないどころか、ほとんどの人間が死ぬまでに行かないであろう宇宙空間を体験できる、という点で。疑似体験をよりリアリティを持って体験できるという点で、3Dという形態は、間違いなく必然。というわけで、以下で感想を書きたいと思うが、あんまり直接的にネタバレはしないと思うんですが、それでもネタバレが含まれると思うので、見る予定がある方は読まない方がいいかもです。

 ピンチに次ぐピンチ!

 本作の何よりの魅力は、上でも書いた通り宇宙空間の疑似体験にあるが、そのリアリティは半端ではない。いや、行ったことなんてもちろんないから、それがどれだけ本物に近いかなんてわかりようもないけれど、本物っぽさがすごい。それは、撮影や俳優の演技の素晴らしさが大前提としてあるけれど、3Dの大画面が大きな役目を果たしていると思う。この3Dの使い方もまた撮影というか、カメラの回し方と非常にマッチして効果的になっている感じ。一人称的なカメラが結構使われていて、それがまた筆舌につくしがたくよい。

 そんなリアリティのある空間で繰り広げられるのは、ピンチに次ぐピンチに、必死に立ち向かう人間たちのドラマ。90分全てがピンチといっても過言ではないほど、危機的状況のオンパレード。行きつく暇もないとはまさにこのこと。映像のリアリティもあいまって、一種アトラクション的な面白さがあるし、アトラクション以上に、命の危機をダイレクトに感じるので、その緊張感は半端ではない。

 

徹底的な人間賛歌―それでも戦うサンドラ・ブロック

 そんなピンチの連続に、あくまで立ち向かおうとする、サンドラ・ブロック演じる主人公がまた素晴らしい。死と直面しても、奇跡などおこらない。あくまで自分自身で立ち向かうしかない。徹底したリアリズムがそこにはある。

 極限状態の中で、死と直面した人間の、その心が折れようとする瞬間をも、本作は、正面から描く。その弱さを孕みつつも、受け継いだ思い・遺志を縁に再び立ち上がる強さ。その両者のいずれも逃げずに描いた本作のドラマに、心が動かされないわけがない。それが本作をたんなる3D映像がすごいだけの特撮映画ではなく、至高の疑似体験へと昇華している。

 

 そんなわけで、間違いなく万人が満足して劇場を出られる傑作だと思う。宇宙空間を体験できる稀有な映画でもあると思うので、興味のあるかたは見に行ってみては。

 

 

ゼロ・グラビティ [Soundtrack]国内盤

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