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3Dの臨場感とシリアスな物語―『アメイジング・スパイダーマン2』感想 

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 『アメイジングスパイダーマン2』を3D字幕版で鑑賞。前作で提示した明るくて軽妙なスパイダーマン像を継承しつつも、物語はシリアスな方面に振ったかなという印象。そしてそれは正しい方向性だったなと思う。以下でネタバレしつつ感想を書いておこうと思うんですが、本作は絶対ネタバレ見ない方が楽しめると思うんで(当たり前かもしれませんが)、見ようと思っている方は読まない方がいいかもです。

 3Dを最大限に生かしたバトル

 本作の魅力は、なによりも3Dの効果を最大限に生かした画面作りとアクションシーンにある。いきなりニューヨークの街中を縦横無尽に飛び回るスパイダーマンの臨場感に、序盤からテンションは最高潮。この導入のアクションシークエンスだけでもう期待しか沸いてこないわけですよ。

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 なんといっても敵が3Dのために選ばれたんだろうな、と感じるほどバトルシーンの3Dは素晴らしい。今回のメインの敵、マックス・ディロン=エレクトロがとんでもなく3Dに映える。電撃で街をぶっこわしまくる様はド迫力だし、予告でも散々見た上のシーンの楽しさときたら。このエレクトロの大暴れを見るだけでも、お金を払う意味がある。

 もうひとりの敵役グリーンゴブリンも、戦う場を上手く設定することによって3Dを存分に生かしたバトルになっていた。

 で、敵が魅力的だからこそ、それを迎え撃つスパイダーマンもまた魅力的なわけですよ。電撃によって同時多発的に危機に陥る市民たちを、一人残らず助ける。その驚異的な認識能力を、ストップモーションを効果的に使ってスタイリッシュに演出していて、とんでもなくかっちょいい。全ての市民を助けるスパイダーマンがいい。

 バトルシーン以外にも、オズコープ社の高層を下から煽る構図とか、3Dを意識した画面作りが徹底されていたなと感じます。

 

ダークナイト』の軌跡をなぞる物語

 そんな映像が魅力である『アメイジングスパイダーマン2』、物語の方はシリアスの方向に大胆に進んだなという印象を受けた。この印象は、ヒロイン、グウェン・ステイシーのまさかの死という点からくるものだ。監督マーク・ウェブが『(500)日のサマー』でみせたコミカルかつポップな恋愛描写を作中で積み上げた意味は、ああ、この喪失を描きたかったからなんだなと得心した。単に守られるだけでなく、スパイダーマンと協力して敵と戦うヒロインであったグウェンは、物語上の足かせになることは、あんまりないんじゃないかな、と勝手に考えていた。そんな便利なヒロインを退場させるとは、僕にとっては全くの予想外で。

 

 このグウェンの死によって、傑作『ダークナイト』におけるブルース・ウェインバットマンのたどった道を、ピーター・パーカー=スパイダーマンもまた辿った、という印象を受けた。

 『ダークナイト』におけるバットマンの如く、スパイダーマンもまた、最愛の人を失う。前者では、そこからの立ち直りというか、ヒーローとしての再起は、『ダークナイト・ライジング』の序盤に持ち越されることになるが、『アメイジングスパイダーマン2』では、喪失からの再出発までを描いているように感じる。どちらも独特の鑑賞後感があると思うが、前者のそれは得も言われぬ悲壮感とヒロイックさが漂っていたのに対して、『アメイジングスパイダーマン2』はより前向きで、明るい印象。

それがとてもいいなと。

 とはいえ、続編を考えたらこれは大問題なんじゃないかと。これ以上ないものを失って、なおかつそこから立ち直ったスパイダーマンに、次はどんな試練を与えようというのか。それは大層困難であるように思われる。続編作る気満々の終わり方でるにも関わらず。高い高いハードルをどう超えるか、それが楽しみでもある。

 

 

 

 

 

【作品情報】

‣2014年/アメリカ

‣監督:マーク・ウェブ

‣脚本:アレックス・カーツマンロベルト・オーチー、ジェフ・ピンクナー

‣出演