先日映画館に行った際に映画のチケットに釣られて契約した動画サイト、U-NEXTで『ジャージー・ボーイズ』をみました。映画館でみようみようと思っているうちに上映が終わってしまって悲しい気持ちになったのですが、この機会にみて悲しみが深まりました。よすぎた。以下で簡単に感想を。
音楽よければすべてよし
『ジャージー・ボーイズ』の何が良かったかって、やっぱり音楽ですよ。ブロードウェイのミュージカルが元になっていてるだけあって、やっぱりバックで流れる音楽の存在感が半端ない。それはフォー・シーズンズが偉大なグループであった証左でもあると思うのですが。なんか先日みた『6才のボクが、大人になるまで。』なんかもそうですが、音楽が素晴らしいと映画全体の印象がめっちゃ良くなりますね。
Can't Take My Eyes off You - Frankie Valli and The ...
「君の瞳に恋してる」ぐらいしかきちんと聞いたことはなかったんですが、そのほかの楽曲もよかった。フランキー・ヴァリ演じるジョン・ロイド・ヤングの声の個性が半端ではなく、そのフォー・シーズンズの成功にも説得力があって。このキャスティングの時点で勝利が約束されているようなもんでしょ。
憎みきれない地元とあいつ
それで物語も、結構自分に響くところがあってですね。結局地元を出て成り上がろうとするやつらの物語だと思うわけですよ。地元を出るには、軍に入るか、マフィアになるか、有名になるか。ジャージー・ボーイズは有名になることで地元から逃れようとする。ベン・アフレックの『ザ・タウン』もそういうお話だと思うんですが、やっぱり「田舎=暗い過去を捨てて都市=明るい未来へと向かいたい」的な欲望はアメリカにもあるのだなあと。それって日本でも似たような構図があると思うわけですよ。だから『ジャージー・ボーイズ』は特殊アメリカ的な映画でもあるけれど、日本の状況ともリンクし得る。というかこの構図自体は近代国家普遍の問題なのでは、という気もしますが。
音楽業界で成功をおさめ地元から脱け出したかに思えたフォー・シーズンズたちは、しかし有名になっても窮極的にはそこから抜けきらない。トミーの素行は地元の時のままで、それが回りまわってグループを窮地に追い込む。そうしたトミーを見捨てることで、フランキーは地元という重力圏から抜け出せたかもしれない。事実、ニックやボブの取った道はそういうものだったろう。しかしフランキーはそうはしなかった。彼の借金を実質肩代わりまでして、愛人にも捨てられても、彼は地元を捨てられない。
その理由が明らかになるクライマックスは、地元に対する捨てようのない愛着に溢れる名シーンだと思う。結局彼の胸にあったのは、貧しくても4人で夢をみた、あの地元の時空に他ならなかったのだ。空前の成功を収めてなお、そこに思いを馳せざるをえない過ぎゆかぬ時間。彼は成功したからこそ、そこに思いを馳せる特権を得たともいえるかもしれないが、それでも愛することができるということ自体が尊いものだと僕は思うのです。
未だに自分にとって地元との関係ははっきりとせず、到底好きなんていえないけれども、やっぱりいつの日かそこに立ち戻りたいと思えるものになるとしたら、それはそれでいいのかもなーなんて。そんな日は来るかもしれないし、来ないかもしれないわけですが、ともあれ『ジャージー・ボーイズ』は好きです。ソフト買いたくなってしました。
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【作品情報】
‣2014年/アメリカ
‣監督:クリント・イーストウッド
‣脚本:ジョン・ローガン
‣出演
- フランキー・ヴァリ - ジョン・ロイド・ヤング(川島得愛)
- ボブ・ゴーディオ - エリック・バーゲン(前田一世)
- ニック・マッシ - マイケル・ロメンダ(松田健一郎)
- トミー・デヴィート- ヴィンセント・ピアッツァ(高橋広樹)
- ジップ・デカルロ - クリストファー・ウォーケン(立川三貴)
- メアリー・デルガド - レネー・マリーノ(林真里花)
- メアリー・リナルディ - キャサリン・ナルドゥッチ
- フランキーの父 - ルー・ヴォープ
- フランシーヌ・ヴァリ(17歳時) - フレイヤ・ティングレイ
- フランシーヌ・ヴァリ(7歳時) - エリザベス・ハンター
- フランシーヌ・ヴァリ(4歳時) - グレース・ケリー
- ボブ・クルー - マイク・ドイル)(滝知史)
- ジョー・ロング - ロブ・マーネル
- ニック・デヴィート - ジョニー・カニツァロ
- ノーム・ワックスマン - ドニー・カー
- ドニー - ジェレミー・ルーク
- ジョー・ペシ - ジョーイ・ルッソ
- ストッシュ - ジェームズ・マディオ
- ロレイン - エリカ・ピッチニーニ(恒松あゆみ)
- ヴィート - スティーヴ・シリッパ
- 会計士 - バリー・リヴィングストン
- チャールズ・カレロ- マイルス・オーブリー
- エンジェル#1 - キム・ゲイトウッド
- エンジェル#2 - ジャッキー・セイデン
- エンジェル#3 - カイリ・ラエ
- エド・サリヴァン - トロイ・グラント
- ミス・フランキー・ノーラン - ヘザー・ファーガソン・ポンド
- ビリー・ディクソン - ジョン・グリフィン
- ハル・ミラー - チャズ・ラングレー
- アワー・サンズ・オーナー - ビリー・ガーデル
- ウェイトレス - フランチェスカ・イーストウッド
- エンジニア - ショーン・ウェーレン