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『世界にひとつのプレイブック』 最後のセーフティネット=家族

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 『世界にひとつのプレイブック』をみた。予告編を見る限り爽快な感じで終わりそうだし、なんかアカデミー賞にいっぱいノミネートされてたし、みたいなあんまり積極的でない動機からみることに決めたのだが、予想をはるかに上回る爽快感、面白さだった。俳優たちの名演技は筆舌に尽くしがたい。

 見るまでは知らなかったが、本作の監督はデヴィッド・O・ラッセル。前作『ザ・ファイター』でもそうだったが、本作でも「家族」が重要なモチーフになっているなと感じた。その点について思ったことを書いていこうと思う。

 『ザ・ファイター』は、主人公が、家族に対して複雑な思いを抱きながらもどうにか折り合いをつけ、共に歩んでいこうとするお話だった*1。それとロッキー要素が絡み合い、素晴らしい爽快感を生み出していたように思う。

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 それがデヴィッド・O・ラッセル監督の前作『ザ・ファイター』だったわけだが、『世界にひとつのプレイブック』は、『ザ・ファイター』とかなり似た構図になっているような気がする。ボクシングがダンスに替わり、それに恋愛要素がプラスされているような感じというか。いかれた登場人物を演じる俳優の演技がキレッキレなのも共通している。

 そんな中、「家族」の描き方は、どっちも希望に満ちてはいるものの、興味深い差異がみられるように思う。『ザ・ファイター』における家族は、主人公にとって劇薬というか、いい部分も悪い部分も同じくらいあるけど、どうしても絆を切れない、かけがえのない存在として描かれていた。特に劇中では、散々その悪い面が強調して描かれ、どうしようもないやつらだけど、それでも主人公は彼らと共に歩むのだ、という面が強かった。

 一方、『世界にひとつのプレイブック』では、いかれた主人公によりそって、献身的に、無償の愛と呼べるような態度で共にあゆんでいこうとする両親の姿勢が印象的だ。実際、主人公は仕事もしていないし、両親の助けがなければ生きてはいけないだろう。いかれた主人公が、ラストには立ち直れた(ように見える)のは、ヒロインはもちろんだが、間違いなく両親のおかげだ。ヒロインとの関係も、母のおせっかいや父親のアドバイスがなければ成り立たなかったかもしれない。

 こんな感じで、『世界にひとつのプレイブック』では、より家族というものが楽観的に描かれているなあ、と思った。だからこそ、見終わった後の爽快感が半端ないのかもしれない。それがたとえファンタジーであったとしても。

 

 

 

 

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*1:適当すぎる要約