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映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

彼らの未来、東京の記憶——『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』感想

ペルソナ5 ザ・ロイヤル - PS4

 『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』、ようやくエンディングに辿り着きました。以下、感想。

 

貴方は、囚われ…
予め未来を閉ざされた、『運命の囚われ』。

これは極めて理不尽なゲーム…
勝機は、ほぼないに等しい。

しかし、この声が届いていると言う事は
まだ可能性は残っているはず…

…お願いです。
このゲームに打ち克ち…世界を、救って…

逆転の鍵は、絆の記憶…
仲間と掴んだ…起死回生の真実…

どうか、思い出して…
貴方と世界の、未来の…ために…

  巨大な悪の逆鱗に触れ、人生を大きく傷つけられた主人公が、何者かによって与えられた異能の力によって反逆の狼煙をあげる。『ペルソナ3』以来のゲームシステムをさらに洗練させた『ペルソナ5』に、後日談を加え細部にさまざまな要素を追加した完全版。かなり効率を意識したプレイングでも、無印までの部分をクリアするまで90時間、追加のエンディングまで110時間。8月はとにかくこいつに時間をとられ、本も読めんし映画もぜんぜんみれませんでした。なんという贅沢!

 お話についての感想は以下に書いた記事とそれほど変わっていない。

amberfeb.hatenablog.com

  わたくし個人としては、反逆すらそのうちに組み込むシステムという神のくびきを断ち切る無印版エンディングにまったく満足しており、そのためこの『ザ・ロイヤル』で語られる、統制の神を打倒したあとの挿話はやや蛇足と感じた。

 作劇の点でいえば、「巨悪の陰謀の前に非業の死を遂げた肉親が生きている世界」の重みづけに失敗していて、それは疑いなく瑕疵になっている。たとえば『ペルソナ3』の後日談で「主人公の死」が賭け金となり仲間同士で戦ったコロッセオ・プルガトリオの記憶を想起するならば、この『ペルソナ5』の面々はあまりにたやすく「死者が生きている世界」の誘惑に打ち勝ってしまっている、という気がする。それは『ペルソナ3』後日談の展開がユーザーに必ずしも歓迎されなかったがゆえに、キャラクターに泥をかぶせることを忌避する傾向にあるからなのではないかと推察するが、それによってドラマの迫真性は決定的に毀損されている。

 だがほんとうはそんなことはどうでもいいのだ。無印版とあわせて200時間超この作品世界に付き合ってきて、わたくしはこの世界ないしキャラクターにほだされてしまった。この『ザ・ロイヤル』での追加部分では、ゲームで語られる物語のはるか外に、キャラクターの未来をかなり意識的に開いていった。そうして物語が終わった後も彼ら彼女らの物語が世界に投げ渡されたことが、素朴にうれしく思う。

 また、今般の状況下でこのゲームをプレイすると、東京という都市の雑踏のざわめきがなんだか素朴に懐かしく感じる。『ペルソナ3』の人工島、『ペルソナ4』の架空の地方都市と、「どこでもない場所」を舞台にしてきたこのシリーズだが、この『ペルソナ5』では明確な作劇上の要請によって現代の東京が舞台となった。そうして2010年代の東京の記憶をパッケージングしたタイムカプセルとして、未来の誰かに届くといい。