なんとか上映終了前に駆け込みで『オアシス:スーパーソニック』をみまして、大変よかったです。以下感想。
1996年、8月11日。25万人もの人々が、イギリスはネブワースに集まっていた。ただ、あるバンドのかき鳴らす音楽を聴くためだけに。そのバンドとはすなわち、オアシス。、90年代最大のライブともいわれたそのライブが、ブリットポップムーブメントという狂騒の中心にあった彼らががもっとも輝きを放った瞬間だった。そのライブを一つの頂点として、オアシスというバンドの物語が語られる。
オアシスの約20年のキャリアのなかで、セカンドアルバムである〈What's the Story〉Morning Glory?が一つのクライマックスであったことは、オアシスというバンドをどう評価するにせよ、ほとんどすべての人が同意するに違いない。このドキュメンタリーの語る一種の歴史観はまさしくその認識に則っているといえて、モーニンググローリー以後のキャリアはその輝きの残照に過ぎない、とまで語っているように思われる。モーニンググローリー以降、オアシスがどんなキャリアをたどったのか、もちろん知っているだろう?といわんばかりの構成は大胆不敵だが、しかしバンド結成から頂点に至るまでの鮮烈な軌跡は、ああ、たしかにオアシスというバンドがこの世界でもっとも力強く、強烈に、自分自身の存在を世界に向けて叫んでいた、そういう時代が確かにあったのだと思わせてくれる。
もうこの時期のオアシスの楽曲はアルバムのどこをとっても、あるいはシングルのB面ですらも、無限といっても差し支えない才能の迸りに満ちているわけで、それらの楽曲群を映画館の極上の音響で聴くことができるというだけでもう圧倒的に満足なわけで、極端にいってしまえばドキュメンタリーの部分なんかはわりあい僕にとってどうでもよかった。
しかしドキュメンタリーの部分もやっぱりよくて、それは時系列に沿ってバンドに寄り添っているがゆえに、圧縮された形でオアシスというバンドの歴史を伴走しているような体験ができたことは得難いものだった。おそらくもう絶対、たとえ再結成されようが、この時期のように若さとエネルギーに満ち満ちた雰囲気を湛えたオアシスというバンドをみることはかなわないわけで、その時期の彼らの姿をこういうふうにして追体験できたのは想像以上によかった。
編集としては、とにかくギャラガー兄弟に寄り添った語りになっていて、たとえばあの世に悪評高いブラーへの罵倒とか、ブリットポップムーブメントまわりのエピソードははっきり捨象されている。そこらへんはかつて『リヴ・フォーエバー』で語られたことだし、というのもあるかもしれないけれど。
とにかく、世界最強のバンドが世界最強の曲を鳴らし世界最強に観客をブチ上げた、その瞬間に至る軌跡を追体験させてくれたというだけで、見に行った甲斐があったというもんでした。オアシスは最強。
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【作品情報】
監督:マット・ホワイトクロス