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記号性の否定、さらにその先へ――『ガールズ&パンツァー 最終章』第3話感想

ガールズ&パンツァー 最終章 第2話 [DVD]

ガールズ&パンツァー 最終章』第3話をみたので感想。

  戦車に乗って戦闘を繰り広げる競技、戦車道が存在する世界で、女子高生たちが活躍する『ガールズ&パンツァー』シリーズの最終章。ミリタリー的なディテールへのフェティシズムを部活もの的なプロットで武装させたこのシリーズは、テレビシリーズでの積み重ねのなかで「戦車道」という架空の競技に見事に肉付けをし、かつ劇場版およびこの最終章では、さらにそれを深化させるという離れ業を達成している。3DCGで描かれた戦車が大地を踏みしめ、砲弾が空を切り裂くその快について、言葉で語る意味もそうあるまい。

 一両を複数人で操るという特性上、登場するキャラクターのは膨大で、それぞれあからさまに記号的な特性を付与することで、キャラクターを極めて効率的に立ち上がらせ、テレビシリーズ1クールという短い尺のなかで不足なくドラマを展開させることに成功していた。特にその記号性は、大洗女子と対峙する対戦相手に顕著で、それぞれのチームがある種のコスチュームプレイ的に、特定の国家の意匠をまとうことで、ミリタリーに親しむ視聴者をほどほどに満足させてきた。

 『最終章』第2話の結部がシリーズ全体を通して極めてエポックであったのは、このコスプレ的な記号性をキャラクター自身が否定し、コスプレを貫徹させること以上に、チームとして勝利することに執念を燃やすことを決断したから、これに尽きる。「突撃」を身上としてきたものたちが、その戦術を捨て撤退する。この「撤退」という後ろ向きの運動をクライマックスにおいたのは、まさにここからコスプレを超えた真の戦車道が始まるのだという宣言でもあったのだろう。この第3章でもコスプレの否定というモチーフは継承され、それこそが新生黒森峰に勝利をもたらす。

 しかも第3話は、さらに新たな問いを投げかけてクリフハンガー的に次回に続く。その問いとは、「西住みほ抜きで大洗女子は大洗女子たりうるか?」という問いであり、あんこうチームがフラッグ車でなくなったことを思えば当然とりうるルートであるとはいえ、チームの核心として縦横無尽に動くことで勝利をもたらしてきた西住不在で、いかにドラマを展開しうるか、というのは作り手にとっても大きな挑戦ではなかろうか、と推察する。

 ここに至って、もはや敵の失着で幸運な勝利を得ることは、なんの快ももたらさないだろう。第4話がいつ公開されるのか、現段階ではわからないが、ほどほどに楽しみにしてお待ちしておりますわよ。