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記号と希望の在処——『アクダマドライブ』感想

アクダマドライブ 第4巻(初回限定版) [Blu-ray]

 『アクダマドライブ』をみていました。フジテレビオンデマンド配信限定と聞いてた気がしたんですが、いろんな配信サイトで視聴できるようになってよかったですわね。以下、感想。

 「アクダマ」とよばれる犯罪者が跋扈する不穏な街、カンサイ。都市は外部から遮断され、彼方にあるという別の街、カントウにつがなるという唯一の道を走るシンカンセンを、人々は崇めていた。ひょんなことからアクダマをめぐる騒動に巻き込まれた「一般人」の少女。彼女とともに事態に巻き込まれたくせ者ぞろいのアクダマたちの、犯罪と冒険。

 studioぴえろ制作によるオリジナルのテレビシリーズ。ストーリー原案は『ダンガンロンパ』シリーズで知られる小高和剛で、キャラクターデザインには小松崎類を起用しており、『ダンガンロンパ』の座組を中核に据えた企画という雰囲気が濃厚にただよう。監督は『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』などの田口智久

 舞台となるのは、ごてごてしたサイバーパンク風味の都市、「カンサイ」。いかにも『ブレードランナー』から『攻殻機動隊』などを経てまっせ、という感じで、あるいは『ブラック・レイン』からの連想なのかもしれないが、関西ないし大阪というトポスにこうしたぎらぎらとしたディティールを貼り付ける想像力のエコノミーはこの作品を貫いているといえる。記号性を世界ないしキャラクターにあからさまに貼り付け、その記号からの逸脱ではなく記号そのものの運動によってドラマを駆動していく。そのような活劇によって、この『アクダマドライブ』は徹頭徹尾成立している。

 アニメおよびその想像力から派生したフィクションにおけるキャラクターの記号性。その処理の方策には概して二つの方策があるだろう。一つはドラマの積み重ねでキャラクターを記号から逸脱させるような仕方。それの幸福な成功例がたとえば『とらドラ!』であって、記号にすぎない存在に思われたキャラクターがいつのまにか自立し、勝手にドラマを駆動させていくようなおもしろみこそ、その種の作品の魅力であろう。

 一方で、その記号性を引き受けて、記号の運動をこそ活力とするような作品もありえる。それはたとえば、極めて記号的に設定された乙女ゲームの世界を舞台にした『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』などがいまぱっと想起されるのだが、『アクダマドライブ』もまたこちらの側の想像力を用いている作品だといえる。『はめふら』はメタフィクション風の仕掛けで自身の記号性をコメディの燃料にしたが、『アクダマドライブ』は、有無を言わさず主人公たちをめぐる状況を進行させ、アクションの見せ場を供給し続けることによって、ときに記号性にまとわりつく陳腐さを振り払おうとする。そしてそれはおおむね成功しているといっていい、と思う。

 ディストピア的な舞台設定を用意しながら、そこにいささかも思想的な深みなどを書きこもうとしない所作は、明らかにこの作品の美点である。そのようなものがなくても活劇のおもしろさがあればテレビシリーズが十分成立しうる、という証明として、この記号の戯れをながめる時間は無駄ではなかった、と思う。