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マスプロダクトと場所性——『おちこぼれフルーツタルト』感想

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 『おちこぼれフルーツタルト』をみたので感想。

  『ハナヤマタ』の浜弓場双による原作を、feel.がアニメ化。東京都小金井市を舞台に、「おちこぼれ」アイドルユニットの日常と奮闘を描く。よさこいをテーマにした『ハナヤマタ』は、「やりたいこと」のなさに悩む主人公の自分探しといういかにもヤングアダルト的な動機付けがあった。珍奇な部活に周囲の友人たちを巻き込んでいく、という筋立てを丁寧にアニメ化した結果、やや鈍重な印象を残したという気がする。視聴したのも随分前なので、もう記憶もだいぶ薄れているのですが...。

 一方この『おちこぼれフルーツタルト』は、部活もの的な雰囲気は継承しつつ、「アイドル」というモチーフによって各キャラクターの動機づけに寄り添う「仲間集め」のパートをスキップし、キャラクターの魅力と関係性とによりフォーカスが当たっている。

 そうした手際のよさに加えて、キャラクターの身体的特徴が露骨に焦点化され、露骨に物象化した、動物的な作風にシフトチェンジしている点に大きな意外の感があった。また、排泄の場面への言及は、こうした『まんがタイムきらら』系列の作品では一般的なのかしら。流石にそんなことはないと思うが...。モブキャラの描画は大胆に省略され、学校空間という無数の人間関係が生じうる空間の描写もオミットし、関係者以外不在の時空間をつくりあげていて、作品世界は非常にミニマルである。

 かわいらしいキャラクターたちはそれぞれ記号的で、主役は『ゆるキャン△』の面影を感じさせたり(連載開始は『おちこぼれフルーツタルト』のほうが先なのでこの言及は転倒しているんだけど)、『まんがタイムきらら』的なるもののエートスを強く感じる。「居場所の廃止」がドラマの駆動因となる点は『ラブライブ!』の反復の感があるが、それがあくまでギャグの範疇にとどまり深刻化しない点はこの作品の明白な美点だろう。そうしたありきたりさとゆるさは、マスプロダクトじみたよさみを生じさせていると感じる。マスプロダクトという形容は決してこのアニメを貶めるものではないだろう。

 さて、東京都下を舞台にしたアニメは枚挙にいとまがないとは思うが、「ひがこ」=東小金井にスポットをあてていて、このアニメの(排泄の強調と並んで)変な点の一つだと思う。『SHIROBAKO』の武蔵野アニメーションの所在地、武蔵境駅から一駅だが、その印象は驚くほど異なる。上京した少女にあの特になにもないロータリーと対峙させ、東京的なるもののイメージを適度にずらしてみせるという意味では、確かに東小金井くらいがいい塩梅なのかもしれない。これが羽村だったら(羽村を馬鹿にしているわけではありません、念為)ギャグになりませんからね。『ハナヤマタ』の鎌倉とも好対照ですね。そうした場所性は、この作品のマスプロダクト性を内破しうるほどには先鋭化されてはいないと感じるが、その塩梅もまた、小金井市の場所性なのかもしれません。

 

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  ライブの衣装が『巌窟王』みたいな処理されてるシーンがあったと思うんですが、あれはどういうあれなんだろう。

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