宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

2024年10月に読んだ本と近況

半死半生!

先月の。

2024年9月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬

印象に残った本

 1冊選ぶなら『徹底討議 二〇世紀の思想・文学・芸術』。ひさしぶりにいかつい本を読みました。

読んだ本のまとめ

2024年10月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:3412ページ
ナイス数:128ナイス

https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly/2024/10

 

ホビットの冒険 下 (岩波少年文庫 59)
 ホビットドワーフたちの竜退治の冒険物語は、むしろ竜を倒した後が読みどころなんですな。恐ろしげな竜がわりとあっさり打倒された後、残された財宝を巡ってドワーフたちと人間たちが一触即発になり…という展開は、戦間期の国際政治の雰囲気を感じたりもする。結部の余韻も素晴らしく、まさしく不朽の古典でしょう。

 読了日:10月05日 著者:J.R.R. トールキン
https://bookmeter.com/books/476859

 

■「勤労青年」の教養文化史 (岩波新書)
 同著者による『「働く青年」と教養の戦後史』の精神的続編ともいえる、ノンエリートたちの教養をめぐる歴史社会学的研究。農村における青年団、都市部における定時制高校という、中卒者たちがなんとか人文知につながる教養に接近しようとするための装置、その熱と冷却を丹念に描き出す。教養的なものを求める心性の受け皿としての歴史ブーム、という見立てはなるほどと感じました。

 読了日:10月05日 著者:福間 良明
https://bookmeter.com/books/15558507

 

ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書 290)
 何度読んでも、独立直後のルワンダの混乱ぶりと、そこに分け入ってなんとか物事を立ち上げていく著者の剛腕ぶりに唸る。ルワンダを食い物にする怠惰な欧米人たちへの義憤に満ち満ちているが、こういう仕方で仕事への情熱を燃やせることそれ自体が大いなる幸運と思わざるを得ませんわね。
読了日:10月06日 著者:服部 正也
https://bookmeter.com/books/579717

 

■超約 ヨーロッパの歴史
 このタイトルなのにめちゃちゃんとした本なのですげえ損してる感。ヨーロッパを基礎付ける三つの要素として古代ギリシャ・ローマ、キリスト教、そしてゲルマンを挙げ、それらをめぐる葛藤のなかで近代の啓蒙主義ロマン主義に至る流れが生じたとする大雑把な見取り図を提供してくれたあと、政治形態の変化や農業技術、そして2度の世界大戦等のトピックごとに概説が置かれている。おもしろく読みました。
読了日:10月11日 著者:ジョン ハースト
https://bookmeter.com/books/13630919

 

■徹底討議 二〇世紀の思想・文学・芸術
 12回の鼎談で、20世紀を語り尽くそうとする試み。あとがきをみると発起人は松浦寿輝だったようで、3人の中でもとりわけ闊達に持論を開陳しているが、一回の発言がそれなりに長く、座談を読んでるという感じはあまりない。さまざまなことを教えられたが、結部でも話題になる「シェルターレス」の感覚の話は全体のトーンとしてかなり納得感ある。おもしろく読みました。
読了日:10月17日 著者:松浦 寿輝,沼野 充義,田中 純
https://bookmeter.com/books/21814530

 

■コード・ブッダ 機械仏教史縁起
 2021年、チャットボットが悟りを開いた。そして叢生した機械仏教をめぐる不可思議な連作短編。真顔で与太話を滔々と語っているような調子で、おもしろいかおもしろくないかと言われれば普通の小説のようにおもしろいわけではない、すなわち平常運転の円城塔。真面目に与太話を語ってるのだけどシン鸞とか言われると流石に底が抜けてしまう感じはするが…。
読了日:10月18日 著者:円城 塔
https://bookmeter.com/books/22102157

 

■マリアビートル (角川文庫)
 不運な殺し屋が、簡単な仕事を請け負ったはずなのに殺し屋が跋扈する新幹線に乗り合わせてしまう。ブラッド・ピット主演『ブレット・トレイン』の原作。軽妙な会話で展開を進行させていく語りはストレスフリーで、おもしろく読む。映画のぶっ飛んだ展開と比べると流石に禁欲的に感じましたが、おもしろく読みました。

 

読了日:10月25日 著者:伊坂 幸太郎
https://bookmeter.com/books/7276642

 

■日本のクラシック音楽は歪んでいる 12の批判的考察 (光文社新書 1290)
 日本が西洋音楽を取り入れる過程で、その時のトレンドをがっつり輸入してしまい、それによって変なことになっている…ということから端を発する、批判的論考。そもそも日本の音楽は検校という盲人によって担われていたという特殊な文脈を抜きに語れないということだったり、そもそもピアノの楽譜も相当あやしいものを使ってるのだ、という様々な指摘はなるほどなと読んだ。吉田秀和批判などかなり直裁で印象的。
読了日:10月25日 著者:森本 恭正
https://bookmeter.com/books/21724399

 

半藤一利宮崎駿の 腰ぬけ愛国談義 (文春ジブリ文庫 3-2)
 『風立ちぬ』公開前後に行われた宮崎駿半藤一利の対談。宮崎駿がいかに描くことにこだわり、一方である部分では考証をそれほど気にせず「絵になる」ことを優先するバランス感覚がほのみえておもしろかった。また二人の身の上話もおもしろく読む。宮崎駿の母は『君たちはどう生きるか』のように早世したわけではないが、脊椎カリエスでしばらく寝たきり(のちに快復)だったんですな。
読了日:10月25日 著者:半藤 一利,宮崎 駿
https://bookmeter.com/books/7086472



近況

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