師なので走っている…。
先月の。
印象に残った本
一冊選ぶなら阿部和重『ブラック・チェンバー・ミュージック』。世界の阿部和重化はとどまるところをしらないぜ。
読んだ本のまとめ
2022年11月の読書メーター
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:4638ページ
ナイス数:121ナイス
https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly/2022/11
■後宮小説 (新潮文庫)
架空の中華王朝を舞台に、よく知りもせず後宮に入った少女の破天荒な活躍ぶりを描く。デビュー作とは思えぬ堂にいった語りと騙りの手練手管はお見事というほかなく、ファンタジーノベル大賞の目利きをアピールするにふさわしい第1回受賞作でしょう。文庫本解説で引用される高橋源一郎の評が見事で大変悔しい思いをしました。
読了日:11月02日 著者:酒見 賢一
https://bookmeter.com/books/577083
■米・百姓・天皇 日本史の虚像のゆくえ (ちくま学芸文庫)
多くの識者と対談のある網野善彦だが、本書のように日本中世史のプロパーとの対談は珍しい。網野の考え方に時折異議を差し挟む石井の存在感がいい塩梅に機能している。とりわけ「農業」の範囲をどこまでとるか、という議論での網野のヒートアップぶりが印象に残る。
読了日:11月03日 著者:網野 善彦,石井 進
https://bookmeter.com/books/1926042
■皆殺し映画通信
2013年公開の邦画をめったぎり。こういう当たり屋稼業が許されるのはある種の特権ですよねえ。二人はいらないんだけどインターネットには芸になってないdisりをさかしらに繰り返すやつ大杉栄。ほとんど唯一褒めているのは『中学生円山』で、嬉しくなりました。
読了日:11月05日 著者:柳下 毅一郎
https://bookmeter.com/books/7899760
■きことわ (新潮文庫)
葉山の別荘地、かつて偶然知り合った貴子と永遠子、歳の離れたふたり。別荘地の取り壊しのため片付けに再訪した貴子と、その手伝いに呼ばれた永遠子。まざりあう現在の中に過去が侵入し、二人の語りが混ざり合っていく。町田康の解説が強すぎ。
読了日:11月12日 著者:朝吹 真理子
https://bookmeter.com/books/6950245
■17歳からの民主主義とメディアの授業 ぶっちゃけ、誰が国を動かしているのか教えてください
代議制民主主義のなかで我々がとりうる方策とは。あるいは我々はメディアとどう向き合っていくべきか。高校生向けの政治入門としては極めてシニカルなテイストで、投票行動の意味の小ささ(と重要性)についての語り口なんかは特に誠実。新聞紙の凋落をはじめ、メディアと政治の関係について記述があるのも本書の特徴でしょう。ばーっとおもしろく読みました。
読了日:11月12日 著者:西田 亮介
https://bookmeter.com/books/19419153
■皆殺し映画通信 天下御免
2014年公開の邦画をdisりまくる。しかしこのころから一貫して福田雄一が「観客を馬鹿にしてる」と喝破し罵倒しまくってるので、そこはえらい。末尾の対談で、プロデューサーの役割とかを語っていておもしろい。黒沢清が『GANTZ』撮るかもしれなかったってマジか。
読了日:11月14日 著者:柳下 毅一郎
https://bookmeter.com/books/9225201
■ブラック・チェンバー・ミュージック
ヒッチコックへのオマージュが濃厚な、平凡な男がなにやら不穏な陰謀に巻き込まれていくスリラー。金正日の遺した暗号をめぐる宝探しのラストにじんわり涙腺が緩みました。優柔不断っぽいおじさんが悪いおじさんにいいように使いっ走りさせられるのは近作『Orga(ni)sm』と共通ですが、おじさん同士のいちゃつきが魅力だった『Orga(ni)sm』と比べてベタで仄かなラブストーリー仕立てになってるのが味ですね
読了日:11月18日 著者:阿部 和重
https://bookmeter.com/books/17961014
■激辛書評で知る 中国の政治・経済の虚実
書評に対する評がとりわけ辛辣。必ずしも専門家とはいえない人々が『マオ』を無批判に紹介していることへの怒りと、専門的な知見に基づく同書への批判が特に印象に残る。
読了日:11月19日 著者:矢吹 晋
https://bookmeter.com/books/440659
■未来をはじめる: 「人と一緒にいること」の政治学
高校生に向けた連続講義の書籍化。トランプの大統領就任など時事的な話題から、大文字の政治からミクロな決定までさまざまな話題を高校生に投げかける。坂井豊樹『多数決を疑う』や鈴木健『なめ敵』などの書籍をさらっと紹介していて、とても啓蒙的です。
読了日:11月19日 著者:宇野 重規
https://bookmeter.com/books/13078975
■皆殺し映画通信 冥府魔道
2015年公開の邦画を滅多斬り。三谷幸喜、よく『ギャラクシー街道』のあと『真田丸』で復活できたなと思う。『バケモノの子』評での「日本アニメの副音声映画化」はなるほどなという感じだが、翌年公開の『シン・ゴジラ』『君の名は。』の(あるいは庵野秀明と新海誠の)ポテンシャルを読み損なっていて今から読み返すとおもしろい。『シン・ゴジラ』は「ずっとヤシマ作戦やるしかないんじゃない?」というのはある意味予想通りといえばその通りではあるけど…
読了日:11月20日 著者:柳下毅一郎
https://bookmeter.com/books/11009620
■平家物語 犬王の巻
歴史に名を残すが、いまやその作品は失われてしまった、能役者、犬王。その傍に立つ琵琶法師の友一。失われてしまった歴史、それを呪いと空想の物語で埋める。流れるような語りは、繰り返しも少なくないがそれがむしろ効果をあげていて一息で読んでしまった。しかしここから『犬王』をつくった湯浅政明はほんとすごいわ。
読了日:11月21日 著者:古川日出男
https://bookmeter.com/books/11283191
■封建主義者かく語りき (双葉文庫)
戦後民主主義的なるものに対する逆張りとして、きちんと教養に裏付けられていて適度な反常識ぶりはいま読み返してもおもしろく読めます。
読了日:11月23日 著者:呉 智英
https://bookmeter.com/books/536373
■都市をたたむ 人口減少時代をデザインする都市計画
人口減少時代の都市のあり方を探る。高度経済成長期のように、人口の拡大に伴う住宅等の不足、それを補うための都市計画ではなく、既にあるものを活用しつつ、まだら模様のように都市を組み上げ直す…というのが本書の提起する大きなビジョンだろうか。おもしろく読みました。
読了日:11月23日 著者:饗庭 伸
https://bookmeter.com/books/10112400
■畏れ入谷の彼女の柘榴
すこし不思議な出来事がおこる短編3篇所収。舞城イズムとの共振を感じたクリストファー・ノーランの『TENET』に明示的に言及した「うちの玄関に座るため息」が特にお気に入り。『ディスコ探偵水曜日』以来の運命論の日常的な変奏をみた思いです。
読了日:11月28日 著者:舞城 王太郎
https://bookmeter.com/books/18687568
■11 eleven
見せ物小屋の一座が件を用いて運命の乗り換えを行う「五色の舟」のきらきらとしたグロテスクさがお見事!
読了日:11月28日 著者:津原 泰水
https://bookmeter.com/books/3287619
■皆殺し映画通信 骨までしゃぶれ
どう考えても縦書きの書籍じゃなくて横書きのウェブで読む方がふさわしい感じがする。書籍で読んでるとあらすじ紹介プラスツッコミの形式がどうにもくどく感じるので…インターネットだとさらっと読めるのだけど…。『HiGH&LOW THE MOVIE』2作目の高評価にわたくしもニッコリ!2018年公開予定の映画が見込みで雑にdisられてて笑う。あと『バーフバリ』への熱狂ぶりも。
読了日:11月30日 著者:柳下毅一郎
https://bookmeter.com/books/12706651
近況
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12月はコミケで個人誌頒布するんで、よろしく!
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