10月、あまりの労働強度。
先月の。
印象に残った本
一冊選ぶなら、杉田『ジャパニメーションの成熟と喪失』。江藤淳、『成熟と喪失』だけでもう不朽なのすごいわ。
読んだ本のまとめ
2022年10月の読書メーター
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:5134ページ
ナイス数:214ナイス
https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly/2022/10
■ジャパニメーションの成熟と喪失
宮崎駿と、庵野秀明、新海誠、新海誠という近年大きな存在感を放つ著名な作家を取り上げ、彼らが提示しようとした「大人」とその仕事とはなにかを探る試み。全体を通底する基調として第一部、第二部の宮崎駿論があり、その延長で庵野らの仕事を取り上げるという立て付け。宮崎駿論はさまざまな宮崎の発言を拾っていて、その点教えられるところ大でした。
読了日:10月02日 著者:杉田俊介
https://bookmeter.com/books/18240962
■ブラウン神父の童心【新版】 (創元推理文庫)
ブラウン神父シリーズの第一短編集。小柄で謎めいた行動を起こす神父を刑事が追跡する「青い十字架」での鮮烈な登場、改心してワトソン的なポジションに収まる大泥棒のフランボウなどなどいま読んでも意外性があっておもしろく読みました。エレベーターのトリックなんかは特に時代を感じておもしろかったっす。
読了日:10月08日 著者:G・K・チェスタトン
https://bookmeter.com/books/11273378
■世界の指揮者―吉田秀和コレクション (ちくま文庫)
図書館で借りて147頁まで読んだところで返却期限がきてしまいましたが、これを参考にCD借りまくったので元はとりました。元ってなに?
読了日:10月08日 著者:吉田 秀和
https://bookmeter.com/books/17105
■どこまでやるか、町内会 (ポプラ新書)
構成員にしばしば大きな負担を強いる町内会。なぜそんなことになってるのか、そして町内会のほんとうに果たすべき役割は何か、著者の経験や各地の町内会の状況を参照して考える。本来であれば行政がやるべき仕事の「下請け」として町内会の負担が増している、というのはまさに新自由主義的なエートスが人口に膾炙している証左やなと感じる。町内会の唯一の役割と著者が喝破するコミュニティ意識の醸成の基盤として、必ずしも従来の活動を従来通りやるだけが達成の手段じゃないぜ、と実例をもって論じる、大変プラグマティックな本でした。
読了日:10月09日 著者:紙屋 高雪
https://bookmeter.com/books/11522790
■宮脇俊三 鉄道紀行セレクション全一巻 (ちくま文庫)
『時刻表二万キロ』、『最長片道切符の旅』、『時刻表昭和史』など、宮脇俊三の鉄道エッセイから抜粋したベスト盤的な一冊。やっぱり格調が高いですな。本の本を再読したくなります。
読了日:10月10日 著者:宮脇 俊三
https://bookmeter.com/books/8072632
■なぜリベラルは敗け続けるのか
思想的な首尾一貫性を称揚して、現実に妥協と譲歩を重ねてなんとか解答を探ること、あるいは少しでもちがう思想をもった人間を排斥し、「友達をつくる」ことをしないなら絶対勝てんぞ!というのが本書の大筋だと思う。挑発的なタイトルは著者なりの政治の実践と受け取ったが、しかし本書で書かれていることを自分自身がやることはまあめっちゃ困難よなとも思う。おもしろく読みました。
読了日:10月13日 著者:岡田 憲治
https://bookmeter.com/books/13757848
■クラシック音楽とは何か
名著『西洋音楽史』をより噛み砕いてエッセイ調にした印象の前半部と、著者の経験を盛り込んでクラシック音楽ゆかりの都市を語る後半部に大きく分けられると思うのですが、どちらも大変おもしろく読みました。
読了日:10月15日 著者:岡田 暁生
https://bookmeter.com/books/12423962
■青山真治と阿部和重と中原昌也のシネコン!
3人が仲良くおしゃべりしていて何より。デ・パルマ、そんなにいいかね…とか、やっぱり世代を感じますね。青山真治のことを思うと泣けてきます。
読了日:10月16日 著者:青山 真治,中原 昌也,阿部 和重
https://bookmeter.com/books/1202
■“町内会"は義務ですか? ~コミュニティーと自由の実践~ (小学館新書)
著者の経験をもとに、町内会の必要性とそのつらさ、そして既存の自治会を休会してミニマム自治会を立ち上げた顛末が語られる。のちに書かれた『どこまでやるか、町内会』と重なる部分も少なくないが、こちらのほうが気持ち著者の体験多めで、恫喝されたりするところとかマジで胸が悪くなります。
読了日:10月16日 著者:紙屋 高雪
https://bookmeter.com/books/8316179
■インシテミル (文春文庫)
誤植とも思われる法外な時給に釣られて集められた12人。彼らを待ち受けるのは、殺人と探偵ごっことを課される、閉鎖空間でのデスゲームであった。たとえば『そして誰もいなくなった』と比べてみると、登場人物の個性は薄く、名前とパーソナリティを結びつけることにいささかの困難を覚えるほどだが、その薄っぺらさは自覚的に選び取られたものだろう。語りの焦点人物が監獄に入れられてからのメタミステリ的な展開はとりわけおもしろく読みました。
読了日:10月21日 著者:米澤 穂信
https://bookmeter.com/books/587084
■はじめての沖縄 (よりみちパン! セ)
沖縄、そして沖縄をまなざす内地人たちの語りについてのエッセイ。著者の体験をさまざま引用して、わたしたち(沖縄の人間ではない人たち)と沖縄の関係ないしその語り方を考えていく、蛇行運転のような本なのだけど、その読み味がまさに本書の魅力なんだろうと思う。写真もたくさん掲載されているけど、カラーだったらよかったな〜という気持ち。
読了日:10月23日 著者:岸政彦
https://bookmeter.com/books/12822553
■かがみの孤城
不登校で苦しむ少女は、自室の鏡に招かれ、少年少女たちとともに謎めいた城で宝探しの使命を課せられる。ティーンエイジャーの孤独な苦しみを切実に語っていて読ませるが、展開は平板で最終盤まで動きに乏しいのがややしんどかった。全体の大仕掛けも某超大ヒットアニメ映画と重なるところもあり、そうと気付くと全体の図もおおよそ見えてきてしまうので、強い驚きはなかった。しかし幼い孤独な魂に寄り添ってくれるかもしれないお話として、こういう物語が存在することに意義があろうとも思います。
読了日:10月25日 著者:辻村 深月
https://bookmeter.com/books/11453932
■オペラの運命―十九世紀を魅了した「一夜の夢」 (中公新書)
17世紀から20世紀初頭にかけて、オペラというジャンルが成立して興隆し、そして芸術としての使命を終えるまでを辿る。王侯や貴族からブルジョワ、そして市民層へとその主要な受容者が変わるにつれその芸術としての性質を変えていったオペラ。同著者による名著『西洋音楽史』もそうですが、頭の中に大きな見取り図をインストールしてくれる、たいへん優れた歴史叙述だと思います。
読了日:10月29日 著者:岡田 暁生
https://bookmeter.com/books/516915
■アメリカ紀行
サバティカル期間のアメリカ滞在中に書かれた日記風エッセイ。海の向こうに気軽にいけて、そこで人と交流できた、というのがほんとうにずいぶん前のことのように感じる。結部、日本に帰国した際の異化効果みたいなものが書きつけられているあたりがとりわけ印象に残る。
読了日:10月29日 著者:千葉 雅也
https://bookmeter.com/books/13781790
■民衆暴力―一揆・暴動・虐殺の日本近代 (中公新書)
近世の百姓一揆の流れから明治初期の新政反対一揆、秩父事件、日比谷焼き討ち事件、そして関東大震災時の朝鮮人虐殺と、日本近代において象徴的な事件を取り出し、そこで働く権力と抵抗の機制を読み解く。「世直し」という動機は後退し、しかし通俗道徳により駆動していく暴力は、やがて朝鮮人を「不逞」とみなす心性と最悪の形で結合し、虐殺まで至る。抵抗する民衆と虐殺の主体とを峻別せず、アンビバレンツな主体のありようを摘出しようとする手つきが誠実と感じました。
読了日:10月29日 著者:藤野 裕子
https://bookmeter.com/books/16291093
■小田急線 沿線の1世紀 新装復刻版
小田急の各駅を取り上げ、戦後直後の沿線風景を収めた写真を掲載。小田急沿線ってかつては都内も思いのほかのどかで、高度成長期にその姿を大きく変えたのね、というのがビジュアルでわかっておもしろかったです。
読了日:10月30日 著者:鎌田 達也
https://bookmeter.com/books/12363728
近況
夏の終わりの悲しさ、タイムマシンとしての映画——映画『四畳半タイムマシンブルース』感想 - 宇宙、日本、練馬
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