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映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

アニメ『THE IDOLM@STER』感想

第1話 これからが彼女たちのはじまり

 アニメ『THE IDOLM@STER』をようやく最後までみました。今年で放映から10年ですってよ。以下感想。

  ゲーム『THE IDOLM@STER』の2度目のアニメ化。2007年に放映された『アイドルマスター XENOGLOSSIA』が、キャラクターを借用したスピンオフ的ロボットアニメだったのに対し、こちらはアイドル活動を主題とするという点で、直球のアニメ化だといえる。2010年代、『ラブライブ!』や『Wake Up, Girls!』、『ゾンビランドサガ』など数多くのアニメがアイドルを主題としたが、このアニメ版『アイマス』がある種その走りといってもよいのだろうか。(『プリティーリズム・オーロラドリーム』の放映は『アイマス』に3か月ほど先立つが、この文脈にプリリズをおいてよいものかちょっとわからん)

 さて、この『THE IDOLM@STER』は『天元突破グレンラガン』でキャラクターデザインをつとめた錦織敦史の初監督作品でもある。監督・脚本とともにキャラクターデザインとしてもクレジットされている錦織の手腕によって、このアニメはある種の普遍性を得たという気がする。窪岡俊之によるキャラクターをアニメ的に崩し、シンプルな線のキュートな造形にリファインした仕事は見事というほかなく、錦織敦史というアニメーターはあの馬越嘉彦にあるいは比肩する腕力をもっているのではないか、と感じさせる。

 キャラクターデザインのある種のファジーさによって、多少崩して描かれてもそれが味になる(決して不格好にはみえない)がゆえに、10人以上のメインキャラがせわしく動き回るさまを破綻なく動かすことに成功している。キャラクターが動いていることがまず楽しく、しかもレイアウトも要所要所で見事に決まっていて、作画アニメとしての快に満ち満ちている。後続の『ラブライブ』はライブシーンを3DCGのキャラクターによって処理しているが、あれはまったく正しい。どう考えても、この水準のキャラクターデザインと、それを動かすアニメーターに恵まれる環境がマッチングすることなど極めて稀だろうから。

 そのようにとにかく目に楽しいアニメなので、これらのキャラクターはほとんどドラマを必要とせず自立しているという気がする。だから前半部分の1話完結の各キャラクターを掘り下げる挿話はとにかく楽しく、記号的で明確な悪役が登場してややわざとらしくドラマを駆動させ始めると、やや失速するきらいはあると思う。しかし、とにもかくにも最終話のクライマックスで見知ったメロディが流れ始めると、それはいかにもアイドルのライブのような感覚があり、見事に一本のアニメとして締まったなという感じがする。

 2021年現在、『THE IDOLM@STER』の作品世界は、ソーシャルゲームなど含め、外野からはほとんど把握できぬ規模で広がりをみせている。その中にあって、錦織敦史というアニメーターの個性と魅力とが存分に発揮されたこのアニメ『THE IDOLM@STER』は、未だ確固たる輝きを放っているし、それが色あせることはなかろう、と感じた次第。