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映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

不気味な巨人たちが躍動する―『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』感想

『進撃の巨人』オリジナル・サウンドトラック【前後編分=約80分収録/透明フィルム特殊ジャケット+20Pブックレット】

  『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』みました。原作・アニメは後者を2話まで視聴居たくらいで特にファンというわけじゃなくて、今日は安いし観に行っておくかぐらいの気持ちだったんですが、いや行ってよかった。以下で簡単に感想を。ネタバレが含まれます。

 主役は巨人たち

 人を喰らう巨人によって、人類が壁の中に追い込まれた世界。巨人と人類とは、壁によって隔てられ100年ものあいだ接触することはなかったが、ついに巨人は壁を打ち破り、人間の住む場所へと進撃し、世界を蹂躙しはじめる。

 


「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」立体機動予告編 - YouTube

  ネットでも散々露骨なワイヤーアクションぶりが話題になった上の予告編もそうですが、本作の予告は主役不在。だから予告編では全然心惹かれなかったのかと、本編をみて得心しました。本作の主役、それは立体起動装置で巨人を屠る人類たちではなく、むしろ人類を思うさま貪る巨人たちなのだから。

 しかし予告で強調され、そして画面にはじめて姿を現して壁を破壊するバカでかい巨人は、主役じゃない。真の主役は人類をこれでもかというほど食べ続ける、モブ巨人たちだ。一人ひとり顔立ちや体つきに個性が与えられ、かつそのいずれも生理的嫌悪感を喚起するビジュアルは完璧。でかい人間が人間を喰う、この絵面を心底気持ち悪く、しかもそれがバリエーション豊かに描かれているのをみられただけでもう元はとったなと。ちぎれる手足、裂かれる身体、飛び散る血しぶき。それがひたすら手を変え品を変え映し出され続ける序盤のシークエンスの悪趣味な楽しさは最高でした。

 主役の巨人は魅力的に描写される一方で、屠られる人類はなんとなく間が抜けた感じで描かれる。散々話題になった立体起動装置のぎこちなさすらも、作中ではじめてお披露目される場面の間抜けな感じをみるに、計算された*1ものじゃないか。

 原作・アニメでは調査兵団という見敵必殺のエリートだったエレンたちが*2、消耗戦の果てに投入された最後の捨石のような存在へと設定変更がなされているのも、作中で間抜けな行動をとらせて危機に陥らせるためなんだなあと。素人同然の人間が極限状態で適切な判断を常にくだして合理的に行動できるわきゃない。パニックホラーにはそういうある意味間抜けな人間がよく似合う。

  アレハンドロ・ホドロフスキー監督は、ドキュメンタリー映画『ホドロフスキーのDUNE』のなかで、原作付の映画を撮ることを結婚に喩えて、原作を映画向けにかえる必要性を説いていました。いわく、「ウェディングドレスのままじゃ犯せないだろう。脱がさなきゃ」*3と。その意味で『進撃の巨人』実写化はよい感じの結婚になったのではという。結婚前の姿はよく知らないわけですが。

 

 

 

2015年の「男の戰い」 

 巨人が人類を殺す!喰う!だけで終わっても最高だったんですが、クライマックスに至りそれまでスプラッタホラーだった雰囲気は一変する。端的にいうと『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』がはじまる。流石樋口監督!鷺巣詩郎の劇伴もあいまって完全にエヴァ。そして巨人も、人類とは異なる種族ではなく、どうやら頸椎に本体である人類が乗っけられているらしいことが明らかになる。巨人は人類の登場する汎用人型決戦兵器なのであり、人を喰うのはそれに人類が取り込まれたなれの果てなのである。それって暴走したエヴァじゃないですか!

 「綾波を、返せッ!」じゃなくて「駆逐してやる!」から始まる一連のシークエンスは、完全にエヴァ破じゃないですか。つよい気持ちによって、なんかよくわからぬけどすげー力が覚醒し、絶体絶命かと思われた危機を脱する。最後は序のヤシマ作戦のあとよろしく、なんか熱くなってるとこから助け出してもらう。エレンくんはシンジくんで、しかも綾波でもあるわけですね。不思議だ。

 『進撃の巨人』part.1はだから、エレンが自分自身を見つけ出す物語である、と要約できる。エヴァ破は、シンジが綾波を救い出すシークエンスがクライマックスにあったわけだけども、それはその実、見かけ上「他者を救う」という形式をとった、自分自身を救い出すための行為だった。それによってシンジくんはマッチョな自己を発見(再発見)する。少なくとも、その認識に立ったからこそエヴァQはああいう展開になったんじゃないか。一方、本作にそういうねじれはない。自分自身を救い出すため、自分自身で力を振り絞り、結果として自分自身のアイデンティティを見つけ出す。そのストレートさによって、エレンはシンジくんよりは救われてるのかもしれない。

 

 というわけで、後編では巨人になってしまった後のエレンくんがクバルとかお偉いさんに尋問されたりする展開になったりするってみなさん思ってるわけでしょ?予告もそんな感じだったし。でも『進撃の巨人』=実写版『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』から考えれば、そんな展開がすっとばされることは明白なわけです。

 戦いの後、エレンくんが目を覚ましたそこは、赤く染まった14年後の世界だった...。次回、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』。さぁ~て、後編も、サービスサービスゥ!

 

関連

後編の感想です(嘘)

 

後編の感想。

 

 

アニメ版も後日みました。

 

 

 

 

 

 

【作品情報】

‣2015年/日本

‣監督:樋口真嗣

‣脚本:渡辺雄介町山智浩

‣出演

*1:言い訳が設定というか作中の描写のなかでなされている、ともいえる。

*2:あくまでアニメを数話みた印象です。

*3:この場面、80過ぎのじいさんがクラウザーさんばりにレイプレイプと連呼するので大変趣があります。

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