「劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-」本予告 ...
現在映画『TIGER&BUNNY The Beginning』が公開され、女性層を中心としたアニオタが盛り上がっているようである。TV放映中も周りの人間が結構ノッテいたので、11話までは視聴したのだが、そこでみるのをやめてしまった。その理由は、主人公二人組がホモホモしいのはもちろんだが、作中の世界の弱者に厳しい倫理観、登場人物の常識のなさ、常識的に合理的な判断を下していないことが一目でわかるような適当な脚本にある。
社会的弱者への目線
制作者の倫理観、『TIGER&BUNNY』の世界における弱者の立ち位置が端的に表れているのが、第8話、折紙サイクロンに焦点があてられる回である。犯罪者を断罪するルナティックの登場によって揺らいでいるヒーローの信頼を回復するため、主人公コンビと折紙がヒーロー養成所で指導をすることになる。
虎徹が指導するのは、手汗がいっぱいでるだの、とにかくヒーローには向かなそうな連中ばかり。ギャグ調の演出で彼らは描かれ、そこで虎徹はトホホ、とリアクションを取るのであった。この場面を見て、俺はピーンときた。なるほど、彼らが一見役に立たなそうな能力を駆使して事件を解決!それを見た折紙、自分も頑張らねばと奮起!。こんな展開になるに違いないと。
しかし、放送をご覧になった方々はご存じだろうが、そんな展開にはならなかった。役に立たなそうな能力を持った連中は何一つ救われることなく、この回は終わるのである。折紙君は旧友との再会を経て一回り成長するのだが、彼の悩みなど、手汗がいっぱい出る能力をもったやつより全然ましではないか。
折紙君は自分の能力に自身がもてない風だったが、それがまずちゃんちゃらおかしい。『X-MEN』のミスティークや『ONE PIECE』のボンクレー、怪人二十面相なんて、君と同じ能力で半端なく活躍しているぞ。手汗の奴とかと比べものにならん。
『TIGER&BUNNY』の世界において、能力が弱い奴は絶対に救われない。そんな現実を見せ付けられたようで、なんだが白けてしまった。特殊な能力をもった人間を描いた作品は、社会的弱者の暗喩として能力者を描くことがある。『TIGER&BUNNY』が強く影響を受けたと思われる『X-MEN』はその好例だろう。『X-MEN』の上っ面だけなぞって、その社会批評的な側面をごっそり削り、削るだけならまだいい、社会の弱者に対するなんの思いやりもないような無神経な描写に、怒りを覚えたのであった。
常識的な判断力の欠如
常識的な判断力の欠如が現れていたのは、11話、テロリストと交渉し、凶悪犯ジェイク・マルティネスを解放する場面である。街に多数の爆弾を仕掛けられて市民を人質にされた街の首脳陣は、特に手段を講じることもなく、対応をヒーローたちに丸投げして凶悪犯を解放することを決定するわけであるが、あり得るか、それ。常識的に考えて、凶悪犯を解放してもテロリストが爆弾を解除するとは限らない。凶悪犯を解放するメリットは、なんらないわけだ。市民の安全のためには、凶悪犯を解放するしないに関わらず、爆弾を仕掛けた能力者は捕まえるなりしなければならない。つまり凶悪犯の解放は、残された最後の手段という位置付けとなろう。そこにいたるまでに無数の試行錯誤があってこそ、凶悪犯の解放という最悪の手段は説得力を持つわけである。
作劇的には、凶悪犯を解放する以外に道はないかもしれないし、それ自体を否定しているのではない。が、他の手段を模索しようともしていなかった(ように見えた)首脳陣の無能さときたら、ちょっと常軌を逸していないか。第一、超能力者が跋扈する世界観なのだから、このようなテロは十分予測されうるはず。対能力者用に訓練された特殊部隊、なんてのもあってもなんらおかしくはない。にもかかわらず、対抗手段がヒーロー頼りとはリアリティのかけらもない。あんな少数の自警団にリスクを丸投げしているこの世界は異常だ。そんな世界に常識など求められようはずはない。
こんな理由で。私は『TIGER&BUNNY』が好きになれなかった。『TIGER&BUNNY』が支持される理由は脚本や世界観とは別にあるのだろう。せっかく、「ヒーローという仕事」、「見世物としてのヒーロー」という魅力的な世界設定があるのだが、倫理観に欠け、常識を欠いた脚本は視聴しようという意欲をなえさせる。こんなコンテンツがもてはやされるようでは、アニメが持つなんとなく幼稚なイメージは払拭されることは永遠にないだろう。
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