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おれたちの斬魄刀――『ダーク・タワー』感想

Ost: the Dark Tower

  『ダーク・タワー』をみました。予告に中二心を喚起され、rottenn tomatoesの点数の低さにビビりつつ見に行ったんですが、うん、まあ。以下感想。

  世界を守る暗黒の塔。それを崩壊させ、世界の破滅を目論む黒衣の男。世界を守護するため、あるいは復讐のため男を追う銃使い、ガンスリンガー。少年が夢に見ていた世界は、虚構などではなかった。ニューヨークから異世界に移動した少年は、ガンスリンガーとともに黒衣の男を追う。

 スティーブン・キングによる同名原作の映画化。長大な原作を映画化するにあたって、登場人物などをばっさりカットし、『シャイニング』的なテレパシー的超能力をもつ少年と、父を殺され復讐心に突き動かされるガンスリンガーの物語として再構成したようだ。結果として、それはあまりうまくいっていなかったように思うのだけれど。

 本作の魅力のひとつは、ガンスリンガーの華麗な拳銃捌きだと思うのだけれど、いかんせんアクションシーンがそれほどあるわけではないので、かつての『リベリオン』の如く、それ自体で映画を成立させてしまうようなカルト的な引力は弱い。主にそれが原因で、物語の求心力の弱さ(だって世界を滅ぼそうとしている悪役を倒すのがゴールだってのはもうわかりきっている)が露わになっているようにも感じる。

 別に物語の求心力の弱さ自体が問題なのではない。数多く作られているマーベル映画をはじめとするアメコミ映画だって、「正義のヒーローが悪役を倒すお話」だっていうのはこちらもわかりきったうえで観ているのだから。その求心力の弱さをカバーするために、たとえばマーベル映画だったら様々な別のジャンル映画の形式を借り受けて、単純な物語の細部を毎度毎度多彩なものにしている。『ダーク・タワー』にはそうした魅力にあまりに乏しい。

 マシュー・マコノヒー演じる黒衣の男の異様な不審者ぶりとかかなり好きなんですけど、めっちゃ強いわりに強さを感じさせる機会に恵まれなかったのも残念。たぶんかませ犬的なつわものが必要なんですよ、少年漫画的に考えると。ピッコロさんみたいな感じの。

 あと「我は銃で殺さぬ、心で殺す」の決まり文句はかなり『BLEACH』みを感じるし、作品の感じ(めっちゃ強キャラが驚くほどあっけなく死ぬ)も似ているし、実写版ブリーチです。ガンスリンガーの銃は斬魄刀。『BLEACH』の精神は死なないのです。

 

 

Ost: the Dark Tower

Ost: the Dark Tower

 

 

【作品情報】

‣2017年/アメリカ

‣監督:ニコライ・アーセル

‣脚本: アキヴァ・ゴールズマン、ジェフ・ピンクナー、アナス・トーマス・イェンセン、ニコライ・アーセル

‣出演