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神殺しと正義の夜明け――『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』感想

バットマン vs スーパーマン ポスター: ドーン・オブ・ジャスティス Batman Vs Superman Superman Teaser

 

 『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(原題:Batman v Superman: Dawn of Justice)を3D吹き替え版でみました。あれ?と思う部分がなかったわけじゃないですが、そんなことはどうでもいいくらいにおもしろかったです。以下適当に感想。ネタバレが含まれますのでご注意ください。

  天より来たりしものを、おなじく天から来たりし、しかし地で育てられた男が打ち倒した。地には並び立つものがない、比類なき力を持つ英雄。地上に降りたち世界を守った神。しかしその戦いは、その強すぎる力ゆえに、地に住むものを傷つけずにはおかなかった。英雄が世界を救った戦いの陰で大切なものを失った男。正義に燃えるその男を駒に、神殺しの陰謀がうごめき始める。

 前作『マン・オブ・スティール』は徹頭徹尾スーパーマンクラーク・ケントの物語だったが、『バットマン vs スーパーマン』はスーパーマンの物語と並行してバットマンブルース・ウェインの物語が前景化し、そして彼らの物語にレックス・ルーサーの陰謀が絡みついてゆく。前作『マン・オブ・スティール』はブルース・ウェインの物語として再解釈され、そしてスーパーマンはまた違った相貌をみせはじめる。ヒーローである以上に、無比の力で理不尽になにがしかを奪ってゆく神として。

 その基調をなすのが、端的に言えば神殺しの物語。レックス・ルーサーはたびたび神とスーパーマンとを重ね合わせる見立てを口にし、スーパーマンが神々しく天より降り立つイメージは執拗に反復され、スーパーマン=神という構図が強く印象づけられる。

 それに対するバットマンとスーパーマンとの戦いは、まさしく神を地に引きずりおろす、というイメージをそのままなぞるかのような展開をたどる。ビルの屋上から始まった戦闘は次第に下へ下へと戦場を移してゆき、やがては神を地に叩きつける。

 レックス・ルーサーの陰謀によって仕組まれたこの戦いは、スーパーマンが紙ではない、むしろ同じ人間なのだとバットマンが認めることで終わる。マーサという同じ名前の母を持つブルースとクラーク。スーパーマンがクリプトンと地球という二つの故郷を持つヒーローなのだ、ということを『マン・オブ・スティール』が長い時間をとって描いたわけだけれども、地球におけるスーパーマンの始まりの物語が、絶体絶命の危機を救う縁として絶妙に効いてくるくるあたり、非常にいいなあと思いました。

 こうして神は人間になり、そして最終的には悪魔ドゥームズデイを打ち破るために命を捨て去ることで、地から神の力をもつものが消え去る。神を失った世界に悪が跋扈する予感と、それに立ち向かうであろう正義の鼓動、それがないまぜになったラストが非常にエモーショナルで、よかったなーと思いました。はい、こんな感じです。

 

  前作『マン・オブ・スティール』に引き続き、笑っちゃうくらい速くて強いスーパーマンのアクションは非常に気持ちよかった。ワンダーウーマンもお前は『ガンダムSEED』のフリーダムガンダムか!ってくらい登場シーンがかっちょいいし、強いし。スーパーマン、ワンダーウーマン、ドゥームズデイと人外連中が跋扈する最終決戦でバットマンさんがちょっと手持ち無沙汰気味に感じたのはあれでしたが、いやーよかった。全然もっとみていたかった。バットマンさん、今後メタヒューマンたちが大暴れするだろうなかでどう立ち回るのか不安半分楽しみ半分みたいなところがあります。

 レックス・ルーサーの物語としてみると、彼の父への強い拘泥と、ほのめかされる虐待の過去なんかから、神=父殺しの物語を演出しようとしていたのかなー、なんて思ったりもしました。その意味で、二人の父の遺志が身体に流れ込んでいるスーパーマンとは対極にいる人物なのかも、とも。

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前作の感想。

 「神がカミングアウト」という名言は「槍でやりなおす」を彷彿とさせるし、ていうか槍でやりなおすっぽいシーンもあるし、実質エヴァQなのでは???(やめろ)

 

 

 

 

 

 

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【作品情報】

‣2016年/アメリカ

‣監督: ザック・スナイダー

‣脚本:クリス・テリオ、デヴィッド・S・ゴイヤー

‣出演(日本語吹き替え)