宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

『2分の1の魔法』感想

2分の1の魔法 (オリジナル・サウンドトラック)

『2分の1の魔法』(原題:Onward)をみたので感想。

  16歳の誕生日に、亡き父の遺したプレゼントを受けとる少年。そこに託されたのは、24時間だけ死者をよみがえらせる魔法だった。魔法が消え去ろうとしている現代世界を舞台に、魔法の石を求める兄と弟の冒険が始まる。

 ウェルメイドという言葉がぴったりあてはまる、手堅く、よくできた脚本、ルック。意味のないものはほとんど画面に映らないのではないかというくらい、次々と伏線が回収されていく手際はおみごと。D&Dであるとか、往年のファンタジーもののゲームに親しんでいたらよりおもしろいのだろうが、そうでなくともまったく退屈しないのはえらい。

 また、「ダメな兄貴」のダメさ加減はかなり迫真性がある(『シング・ストリート』の兄貴をアップグレードさせてダメにした感じ)。オタクで無職で厚かましく、周囲からも白い目でみられている、弟にとって「恥ずかしい」兄貴。その「ダメな兄貴が(世間的に)ダメじゃなくなる」ドラマにしなかったところに、この作品のいまっぽさというか、いまっぽい正しさはあるのかもしれない。ダメな兄貴だろうが、弟にとっては関係ないのだ。

 しかし、父の代補としての(血のつながった)兄、という構図は古くさい(そして決してよいものではない)価値とずるずるべったりという気もする。メインの商売の相手はそういう救いを見出せる人たちなのかもだけど、フィクションの役目はそうじゃねえだろ、とはちょっと思う。