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戦争の長い影——『鉄人28号 白昼の残月』感想

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 『鉄人28号 白昼の残月』をみました。以下、感想。

 1950年代、日本列島。まだ戦争の記憶も生々しいが、一方で高度成長の兆しも感受されてきた時代。戦時中、最終兵器として開発された鉄人28号をあやつる少年探偵、金田正太郎は、うごめく悪と日々対峙していた。そんななか、鉄人の開発者、金田博士の養子で、南方で戦死したと思われていた男、もう一人の金田正太郎が東京に帰還する。時を同じくして浮上する、金田博士が東京の地下に隠した強力な爆弾「廃墟弾」、そして金田少年をねらう復員兵「残月」...。陰謀渦巻く東京で、金田少年が見出すものは...。

 横山光輝の原作を題材にした、『ミスター味っ子』、『ジャイアント・ロボ 地球最後の日』の今川泰宏監督による映画作品。2004年に放映された今川によるTV版の雰囲気を濃厚に継承しているが、あくまでパラレルワールドという位置づけのようだ。2022年現在、今川が監督を務めた唯一のアニメ映画でもある。

 サブタイトルの「白昼の残月」によって、このリブートが『鉄人28号』に託した主題が明瞭になっている。それは今川によるTV版とも共通だが、いってしまえば戦争の(負の)遺産とどう向き合い、継承するか、という問いであり、白昼を戦争が終わった後の平和な状況の喩だとすれば、残月とはまさに長く伸びる戦争の影に他ならない。また、肉親の生み出したものの清算というモチーフは『機動武闘伝Gガンダム』や『ジャイアント・ロボ 地球最後の日』とも共通するし、そういう意味で今川泰宏という作家の持ち味が色濃くでているとも思う。

 なかむらたかしによるキャラクターデザインは記号的で、レトロな調子をのこしつつもキュートにリファインされている。このキャラクターが、昭和30年代のレトロな街並みを背景に動いているだけできもちよい。鉄人28号の巨大感も見事だが、廃墟弾の爆発によって体の半分が溶け出し、傷ついた痛々しい姿がとりわけ印象に残る。それはいうまでもなく、戦争で傷ついた無数の人間の姿と重なるものでもあるだろう。

 『鉄人28号』の「戦争という罪」という主題と、今川が執拗に変奏してきた「親の罪」という主題とが重なり合い、全体として極めて幸福なリブートになっている、と感じる。原作の時代性を強調することで、原作をみごとに現代化=歴史化した、見事な作品だったと思います。

 

 途中までしかみていないTV版もぼちぼちみていかないといけない...。