体調がとても悪かったです。
先月の。
印象に残った本
一冊選ぶならジョー・イデ『IQ』。景浦さんaka本物の男に強くおススメしていただいて、いやよかったです。新たな名探偵の誕生を未だに目撃していないというパーソンがいるならば今すぐ書店にダッシュです。
読んだ本のまとめ
2019年9月の読書メーター
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:4872ページ
ナイス数:198ナイス
https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly
■騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(上) (新潮文庫)
南京大虐殺の記憶が召喚され、この物語はまたもや『ねじまき鳥クロニクル』の重力圏に接近してゆく。
読了日:09月02日 著者:村上 春樹
https://bookmeter.com/books/13527321
■騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(下) (新潮文庫)
これまでの作家のキャリアを越え出ていくような作品というよりは、これまで自身の作品群からモチーフを借り受け反復し変奏する、そのような小説だったと感じる。全く新たな小説を読んだという感動はなく、物足りなくなどなかったといえば嘘になるが、とはいえ、末尾のセクションの無責任にも感じる鮮やかな楽観が心地よくもあり。70歳近くの書き手がその老いをさして感じさせないことは、どちらかといえばよくないような気はする。
と、読み終わった直後に書きましたが、末尾の一文を未だに反芻しているので、悔しいです。悔しい。
読了日:09月03日 著者:村上 春樹
https://bookmeter.com/books/13527324
■ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来
『サピエンス全史』の著者による、人類の未来予想の書。飢餓や疫病、戦争を克服しつつある人類は、近い将来不死と神性の獲得を通して新たな段階へと到達するだろう、とする。未来予想の妥当性はともかくとして、人類にとって人類至上主義こそが強力な力を持ちつつある、というのはへえーって感じでした。
読了日:09月07日 著者:ユヴァル・ノア・ハラリ
https://bookmeter.com/books/13006062
■ホモ・デウス 下: テクノロジーとサピエンスの未来
現在の状況を鑑みて、今後ますますデータ至上主義的な発想が社会のしくみを変えてゆくだろう(そしてそれはサピエンスのあり方も変えるだろう)ということを語り終えて本書は締めくくられる。そうかもね、とも思うのだが、本書は富めるものと貧乏人とのことにまったく語っていない(と一読した限りでは思うんだけど)点が、なんというか本書の議論にのれない理由だったのかもとも思いました。
読了日:09月08日 著者:ユヴァル・ノア・ハラリ
https://bookmeter.com/books/13006063
■スコーレNo.4 (光文社文庫)
このわたしの「あのように愛することはできない≒愛されることはない」という渇きは、やがてどのような救いを得るのか。少女の成長とともに語られるその問いの痛切さと、それを語りきるディテールのリッチさに打たれる。まさしく小説的だと思います。
読了日:09月10日 著者:宮下 奈都
https://bookmeter.com/books/565684
■楽隊のうさぎ (新潮文庫)
センター試験でエンカウントして以来の再会でしたが、よい小説でした。不如意な心の揺れ動きをうさぎに託して語る試みが成功しているかどうかはさておくとして、音を言葉にトランスレーションするクライマックスはお見事。夢中で読みました。
読了日:09月11日 著者:中沢 けい
https://bookmeter.com/books/570666
■狭小邸宅 (集英社文庫)
「現代の蟹工船じゃないすか」。この作中のセリフで本書のスタンスはわかろうというものだが、地獄の労働に叩き込まれる『蟹工船』でありつつ、すべて(なんとちっぽけな「すべて」か!)を得たものがそのことによってすべてを失う『ゴッドファーザーpart2』的な悪漢小説でもあり。唐突な場面転換が生む異様なスピード感に急き立てれるるように一気に読みました。
読了日:09月12日 著者:新庄 耕
https://bookmeter.com/books/9291739
■葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)
煮え切らない舞城王太郎みたいな文体でどうにも乗りきらんなと思って読み進めていたら見事に騙されたので、とにかく悔しかったです。高校生の7歳上ね。ミスリードのさせ方は半ばインチキだと思う(だからあんな補遺なんてくっつけるのだ)。
読了日:09月13日 著者:歌野 晶午
https://bookmeter.com/books/580339
■日本の同時代小説 (岩波新書)
60年代から2010年代半ばまでの日本の小説をたどる。芥川賞はじめとする文学賞の重力を強く感じる歴史叙述と感じるが、それぞれの時代のトレンドを大づかみにして歴史の流れのようなものを摘出している点は流石並みの本読みではございませんわね、という気持ち。しかしミステリやSFへの目配りは、佐々木敦『ニッポンの小説』と比べてだいぶ落ちる。伊藤計劃や舞城王太郎、佐藤友哉あたりは言及されるとはいえ。『阿修羅ガール』で舞城が記憶されるとしたらそれはブンガク史上の損失ですとも!
読了日:09月14日 著者:斎藤 美奈子
https://bookmeter.com/books/13246179
■第七官界彷徨 (河出文庫)
レトロな時代を感じさせるディテールと裏腹の、そこかしこにまとう奇妙な「古びてない」感は、組版だけの力ではないでしょう。しかしその「古びていなさ」を語ろうとすると通り一遍の陳腐な言葉しか出てこないという気もし、第七官界甚だ遠しと感じます。
読了日:09月18日 著者:尾崎 翠
https://bookmeter.com/books/512800
■千利休―無言の前衛 (岩波新書)
映画『利休』の脚本を担当したことをきっかけに書かれた千利休論にして前衛論。トマソンやら近鉄の助っ人外国人やらが千利休を同じ土俵にあげてしまう著者の語り口から、おおよそ尋常の利休紹介本ではないということが察せられるが、赤瀬川原平にとって前衛とはいかなる位置価をもつか、ということが千利休という他人を介することでダイレクトに出ていて、そこは本書のユニークな面白みだと思います。
読了日:09月19日 著者:赤瀬川 原平
https://bookmeter.com/books/475767
■二度読んだ本を三度読む (岩波新書)
『図書』連載の読書エッセイの書籍化。著者の作品にこれらの本は骨肉となって流れていることは言わずもがなであるが、そうした実作者としての語りはかなり禁欲的に抑えられていて、あくまで一読書人の位置を離れないのが意外の感あり。
読了日:09月19日 著者:柳 広司
https://bookmeter.com/books/13700697
■FAKEな平成史
森が、自身のキャリアを辿るような形で、さまざまな分野の人々にインタビューをしていく。トピックは放送禁止歌、天皇、オウム、北朝鮮など。よど号メンバーのインタビューって初めて読んだので、新鮮な驚きがありました。
読了日:09月21日 著者:森 達也
https://bookmeter.com/books/12196503
■トマソン大図鑑〈空の巻〉 (ちくま文庫)
『超芸術トマソン』と結構重複があるのだが、図版と解説のバランスなんかはこちらの方が良いかんじ。
読了日:09月21日 著者:
https://bookmeter.com/books/454207
■水滸伝―虚構のなかの史実 (中公文庫)
水滸伝を、史実との関係から読み解いていく。宋江のモデルとなった人物が2人いた、という説は本書が提起したものらしい。しかしまあ、宋代の皇帝の側近たちの腐りっぷりは、事実は小説より奇なりという感じですごい。
読了日:09月25日 著者:宮崎 市定
https://bookmeter.com/books/161431
■IQ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ホームズとマーロウと『ストレイト・アウタ・コンプトン』を悪魔合体させたがごとき、現代アメリカ的なモチーフを散りばめたオールドファッションな探偵小説。探偵IQの現在と過去とを交互に語っていく語り口、一筋縄ではいかない悪党の雰囲気をたたえたワトソン役、そしてホームズ的な探偵の今っぽいかっこよさ。おもしろく読みました。
読了日:09月30日 著者:ジョー イデ
https://bookmeter.com/books/12846313
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