今年もよろしくです。
先月の。
印象に残った本
一冊選ぶなら蓮実重彦『帝国の陰謀』。短いテクストのなかに読みの快感が凝縮されていて唸りました。
読んだ本のまとめ
2018年12月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2305ページ
ナイス数:140ナイス
https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly
■中国史(上) (岩波文庫)
著者の見立ての特徴的な点は、宋代を近世の始点とする点にあるのだろうと思うのだけど、この上巻は中世終わりまで。しかし格調高くかつ簡明な文体の力よ。欲を言えば地図は下巻にまとめず適宜挿入して欲しかった。下巻読まないまま年越ししてしまいましたが、まあそれはそれで。
読了日:12月07日 著者:宮崎 市定
https://bookmeter.com/books/9729830
■村上春樹 翻訳(ほとんど)全仕事
村上が自身の翻訳の仕事を一冊ごとに振り返るパートと、柴田元幸との対談のおもに2パートからなる。自身の仕事をこういう風に捉えてるのだなーというのは単純におもしろく読んだし、翻訳者としてコンスタントに仕事をしていることに驚く。
読了日:12月08日 著者:村上 春樹
https://bookmeter.com/books/11554253
■メディア社会論 (有斐閣ストゥディア)
「流動化」、「個人化」、「再帰化」の三つの視点を軸に、インターネット、スマホ、コンテンツなどメディアにかかわる領域を対象とする社会学の関心のありようを簡明に概説する。文献案内も付されていて有難い。今っぽい教科書ですね。
読了日:12月08日 著者:
https://bookmeter.com/books/13116342
■サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福
人類がここまで繁栄するに至った道を跡づける。認知革命、農業革命、科学革命こそが人類の歴史を劇的に変えた、というのが著者の見立てで、上巻では認知革命、農業革命が主に触れられる。人類とその他の動物を画する点として、想像されたもの(神話や貨幣)を信ずることができるのか、ということを強調していて、この共同幻想の力によっていま・ここが成り立っているのだし、有史以来そうであった、というのは確かにそうだよなと納得させられる。
読了日:12月15日 著者:ユヴァル・ノア・ハラリ
https://bookmeter.com/books/11069754
■サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福
下巻では科学革命を経てヨーロッパの覇権が確立し、そして現在のバイオテクノロジーの驚異的な進歩がホモ・サピエンスの歴史を全く別のステージに導く可能性に触れて終わる。科学革命とは人類にはまだまだ知らないことがある、「無知」であることを認めた点に大いなる進歩がある、というのはなるほどなという感じ。ソクラテス先生は草葉の陰で千年以上泣いてたんですな。SF的な想像力が随所に働いている感があり、それは人類の虚構をつくりだす力こそ人類史を大きく変えたのだとする著者の主張と響き合っている。
読了日:12月16日 著者:ユヴァル・ノア・ハラリ
https://bookmeter.com/books/11087011
■帝国の陰謀
ナポレオン3世の異父弟、シャルル・ド・モルニー。「私生児」の運命を背負い、いくつもの偽名を使い分けたこの男がクーデターおよびその10年後に書きつけたテクストを読み解き、そこにモダンとポストモダンの胚胎をみる。この短いテクストにいかにも蓮實的な読みと見立ての快が漂っており、本書独特の軽さと相まって気持ちよく読みました。
読了日:12月28日 著者:蓮實 重彦
https://bookmeter.com/books/170373
■ポーツマスの旗 (新潮文庫)
日露戦争の講和条約締結のため、外相小村寿太郎はポーツマスへと向かう。日本海海戦の華々しい勝利の裏で、どうあっても国民感情を納得させられないあるいは泥沼の戦争継続に陥るしかない鉄火場に身を投じる男たちの憂鬱とプロフェッショナリズム。吉村昭の小説とは、すなわち「負けいくさ」の文学なのだな、と思わされるのだが、むしろそうした色合いは、同時代の読者よりまさに負けいくさの只中を生きる我々にとって胸に迫るのではないかなと感じた。
読了日:12月29日 著者:吉村 昭
https://bookmeter.com/books/545270
■袋小路の男 (講談社文庫)
一人称と三人称で語られる奇妙な恋愛小説と、中年男と姪とが手紙の交換の中で儚いものが立ち上がる「アーリオオーリオ」所収。後者の紙飛行機のくだりはお見事。松浦寿輝の解説がまた素晴らしくて唸りました。
読了日:12月29日 著者:絲山 秋子
https://bookmeter.com/books/533177
■リアル人生ゲーム完全攻略本 (ちくまプリマー新書)
我々の人生をゲームに見立て、このゲームを作った神の手になる「説明書」と、その説明書に憤った人類による「攻略本」の2部構成。信用創造がいかにとんでもない影響力を持ったのか、という話は『サピエンス全史』でも触れられていたけど、本書でも神の意図しなかったシステムとして出てきていて、へえ〜という感じでした。
読了日:12月30日 著者:架神 恭介,至道 流星
https://bookmeter.com/books/12279390
近況
個人誌頒布しました!お手に取ってくださった皆様に改めて感謝いたします。
形見で親父を踏みにじれ――『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』感想 - 宇宙、日本、練馬
来月の。