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絶体絶命でこそヒーローは輝く!―『X-MEN: フューチャー&パスト』感想 

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 『X-MEN: フューチャー&パスト』を3D吹き替え版でみた。観る前はファーストジェネレーションと旧3部作のキャストが勢ぞろいする超豪華な布陣に期待半分、過去と未来を接続することでめちゃくちゃ大味なお話になってしまうんじゃないかという不安半分といった感じだったんですが、完全に杞憂でしたね。物語は正直大味ではあったとは思うんですが、それを吹き飛ばすにあまりある面白さ。傑作だったファーストジェネレーションとはまた違う方向性に向かうことで、マンネリにもならずとんでもなく楽しい映画になってたと思います。以下で感想を。

 絶体絶命のX-MEN

 もう何が良かったかって、近未来でミュータント殺戮マシンであるセンチネルと、絶望的な戦いを繰り広げる未来のX-MENたちが半端なくかっこよかった。殺戮マシンセンチネルがとんでもなく強くてえげつなくて、見ている最中は「おお...もうみてられん...」とまで思うレベル。

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 多分X-MENの実写映画史上最強と思えるほど強力な能力、その上相当戦いなれしていると思われる歴戦のX-MENを、大量生産されたセンチネルが屠る屠る。ミュータントたちの攻撃は一向にダメージを与えられず、戦っているミュータントの能力をコピーして別個体に同期すらするセンチネルに対してX-MENはどんどん劣勢になる。あるものは串刺しにされあるものは真っ二つにされ、またあるものは首をへし折られ...。超強力なミュータントたちがいとも簡単に殺害されていくアバンのアクションシークエンスの絶望感は半端じゃない。

 しかしそれでも、X-MENたちは戦うことをやめない。絶対勝てるはずなどないと分かっているのだろうが、仲間を信じて決死の迎撃を行う。このX-MENの雄姿がいい。これで心が動かないわけない。敵も無感情殺戮マシーンなわけだからもうX-MENにフル感情移入ですよ。そして彼らも絶対無敵のセンチネルに対して、それでもミュータントの能力をフル活用してダメージを与えていく。

 この能力フル活用具合がまたいい。特にワープホールを生み出すミュータント、ブリンク(范冰冰=ファン=ビンビン)の能力と、ビショップやらコロッサスやらの能力と組み合わせてめちゃくちゃ「楽しい」能力バトルになっている。絶望的で、しかし楽しい。鋼鉄人間コロッサスをはるか上空にワープさせてからの一連の攻撃とか、もう「こう来たか!」と快哉を叫びたくなりましたね。この楽しい楽しすぎる能力描写は未来だけでなく過去のミュータントも同様で、マグニートーの銃弾曲げとかめちゃくちゃ印象的。あとクイックシルバーなんかはもう本当に大爆笑。彼が最強キャラなんじゃないか?

 また、ストームやらマグニートーやらの「歴戦の猛者」感もまたいいんだなー。アイコンタクトで意思疎通して協力攻撃するあの感じ。彼らがいかに絶望的な戦いを生き残ってきたのか、その年月の、苦しみの重みを言外に語るこのクールな演出。しびれるねえ。こういう能力バトルこそ、俺が『X-MEN』の実写映画に求めていたものだし、まさしく観客がみたかったものだとも思うんですよね。

 

未来は変わる、変えられる

 未来のX-MENの絶望的な戦いの素晴らしさはもちろん魅力なんだけども、もちろんPAST=1973年を舞台に繰り広げられるドラマも当然面白い。JFK暗殺やらベトナム戦争やら、ファーストジェネレーションを意識したと思われる偽史ものっぽい雰囲気を醸し出しつつも、ウルヴァリンを仲立ちにしたプロフェッサーX=チャールズ・エグゼビアとマグニートー=エリック・レーンシャーを主軸にしたドラマは旧三部作を想起させる感じだったように思います。

 彼らが未来を変えるためにとる方法の、悲しきすれ違い。どちらも、ミュータントの、ひいては人類の未来を守ろうという意思は共通しているはずなのに、方法の点では決して相容れることはない。やはりこの二人は、死の瀬戸際まで和解することなく戦い続けるのだという予感を感じさせるのが物哀しい。

 とはいえ彼らの決死の跳躍こそが、新たな未来を切り開いたのが『X-MEN: フューチャー&パスト』だとも思うんですよ。マグニートーの行動なんかラディカルすぎてもう常人の理解を超えているように思えるし、決して賛成は出来ないけれども、そもそも常人の理解の範疇を超えた悲しみ、苦悩を背負っていることも事実で。チャールズとエリック、命がけで未来を切り開いた二人のさらなるドラマは、どう展開するのか。それを見るのが本当に楽しみです。