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地獄甲子園――『デッドプール』感想

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 『デッドプール』を2D吹き替え版でみました。とにかく楽しかったです。以下感想。

  Twitterの宣伝なんかで公開前から話題をかっさらっていたデッドプール氏ですが、スクリーンでの活躍といえば、かつて『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』でヒサンな改造を受けてウルヴァリンの前に立ちはだかって、どうやら原作ファンからは非難轟轟の憂き目にあっておられたらしいことが思い出されます。饒舌すぎる口が災いして口をふさがれ、お世辞にもかっこよくはない見た目の戦闘マシーンに改造されてしまったウェイド・ウィルソンくんが、ようやく本領発揮して「第四の壁」を飛び越えて暴れまわるのがこの『デッドプール』。ライアン・レイノルズ氏も名誉挽回できてよかったよかった。いや僕は決裂してた兄弟が協力する少年漫画展開に加えて、2対1なのに二人の側がなぜか挟み撃ちにあうというアクロバットをみせる『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』のデッドプールとの戦い結構好きなんですけどね、原作ファンじゃないし。

 マーベルシネマティックユニバースなんかはまさしくそうだと思うんですが、アメコミ原作映画ってキャラ萌え的なものを楽しむ、って側面が少なからずあると思うんですよね。シリーズものの強みはキャラの連続性によって思い入れが蓄積されて、映画作品単体で描かれる以上のものを読み取ることが可能だと思って、そうした一つの映画作品というテクストの外部にあるものの連続性みたいなものに惹きつけられることをキャラ萌えといってもいいと思うんですけど、その意味で『デッドプール』はまさしくキャラ萌え映画で、シリーズ化されていないことによるハンデを、宣伝で「こいつはとんでもないやつなんだぜ」ということを強調することでカバーしてる、というように思いました。

 「キャラ萌え」の中心にいるキャラクターが、他のアメコミのキャラクターとは隔絶するほどの個性を持ってるんだから、これがつまんないわけない。昨年、MCUの『アントマン』をみたときには「これは変化球だなー」と新鮮なおもしろさを感じたわけですか、『デッドプール』の新鮮さは『アントマン』とはまったく違うというか、『アントマン』はまだ野球のルールに従っているけど、『デッドプール』は野球のフォーマットでまったく別のことをやっているというか、端的にいえば漫☆画太郎先生の『地獄甲子園』なわけです。普通のアメコミ映画を野球にたとえるなら。

 上映時間中ほとんどの時間じゃべり倒しているデッドプールさんは、まったく関係ない映画のネタバレをしてみたり、「これ『X-MEN』のシリーズとどういう関係あんの?」という観客の脳裏に浮かぶであろう疑問を代弁することでむしろそれをあやふやにしてみせたり、不自然な登場人物の少なさを自作の予算の少なさを暴露してメタ的に整合性をもたせたり、「ありえない」ことを無造作にぶっこんでくるのでやばい。観客に語り掛けてくる映画は数あれど、アメコミ映画というフォーマットでここまで好き放題に暴れているデッドプールさんはやっぱりやばい。

 そんなデッドプールさんの魅力に満ち満ちているので、ドラマのほうは予定調和な愛の回復のお話って感じでもうシンプルかつ明快だし、悪い奴はもうほんとにこいつならどんな目にあってもいいやってなる悪い奴だし、コロッサスさんは馬鹿みたいに「学級委員長」キャラだしで、すべてがデッドプールさんの魅力が発揮されるのを引き立てて、決して邪魔はしない塩梅で組み立てられてる感じが見事というか。いやー楽しかったです。キーラ・ナイトレイがケーブルを演じるという続編を正座して待ってます。

 

 

デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス (ShoPro Books)

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Deadpool

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【作品情報】

‣2016年/アメリカ

‣監督: ティム・ミラー

‣脚本:レット・リース、ポール・ワーニック

‣出演