『海よりもまだ深く』をみる前に見ておこうと思っていた『海街diary』をようやく視聴。是枝監督の映画ってこれまで敬して遠ざけてきたんですが、これは映画館でみたかったやつでした。以下適当に感想。
鎌倉で暮らす三人姉妹。姉妹なのに性格はてんでバラバラの三人は、遠く離れた東北にいた父親の死をきっかけに異母妹と同居し始める。三姉妹と一人がゆっくり、だんだんと、あいまいに、だが確実に四姉妹になっていく一年を、四姉妹と周囲の人物をめぐるエピソードを積み重ねて描く。
いきなり姉妹が増える、という始まりの出来事は劇的かもしれないけれど、それ以降はなんてことのない日々が積み重なっていくような印象で、それがはっきりひとつの映画になっているあたりのバランス感覚がすげえなあと。梅を取ったり失恋したり仕事でいろいろあったり花火をしてみたりと、それ自体は私たちの日常にありふれた出来事のはずで、移りゆく季節のなかで描かれる日常の出来事は劇的ではないようなささやかさでもって眺められているのにもかかわらず、劇的な相貌を帯びているという感じがする。
そんな風に日常の風景を劇的なものにしているのは、やっぱり鎌倉という土地なんじゃないかという気がして、カメラによって切り取られた風景の一つ一つが生きている感じがして、それが映画全体に生命を吹き込んでいる感じがするというか。鎌倉の風景があればこそ、日常の出来事が異化されてドラマチックになっていくのじゃないか、とすら思う。何がいいたいかというと非常に鎌倉に行きたいということですね、はい。
そういうわけですげえ鎌倉フェティシズムに溢れた映画だなーと思うんですが、四姉妹それぞれが魅力あふれまくってるのに四人そろったカットでも不思議と調和している感じがあってそれもビックリでした。広瀬すずさんは『ちはやふる』のイメージが未だ鮮烈に脳裏に焼き付いていたんですが、そこで発揮していた個性とはまた別種の個性がこの映画では発揮されている感じを受けたというか、こちらではより幼い感じの魅力の印象が強かったんですが、それは他の姉妹の人たちとの相互作用の結果なのかなーとか思ったり。
それと、お葬式に始まりお葬式に終わる、という構成も上手いなーと。緩やかに連続していく日常のなかに避けがたい不連続をもたらす、そういう出来事を始めと終わりに配することによって、これからも続いていく彼女たちの日常の物語がひとまずここで区切れます、というのがはっきりわかる感じというか。お葬式のあと、これからも四姉妹の物語は続く、そういう予感と余韻とをたたえた海岸のラストショットがとても素敵だなあと思いました。
漫画のほうも読みたいですね。
【作品情報】
‣2015年/日本
‣監督:是枝裕和
‣脚本:是枝裕和
‣原作:吉田秋生
‣出演
- 香田幸(三姉妹の長女) - 綾瀬はるか
- 香田佳乃(三姉妹の次女) - 長澤まさみ
- 香田千佳(三姉妹の三女) - 夏帆
- 浅野すず(三姉妹の異母妹) - 広瀬すず
- 坂下美海(佳乃の上司) - 加瀬亮
- 井上泰之(湘南オクトパス監督) - 鈴木亮平
- 浜田三蔵(千佳の恋人) - 池田貴史
- 藤井朋章(佳乃の恋人) - 坂口健太郎
- 尾崎風太(湘南オクトパス選手) - 前田旺志郎
- 高野日出子(看護師長) - キムラ緑子
- 浅野陽子(すずの義母) - 中村優子
- 飯田敏男(陽子の叔父) - 清水一彰
- 看護師 - 野村麻純
- 緒方将志(湘南オクトパス選手) - 関ファイト
- 金子美帆(湘南オクトパス選手) - 三上紗弥
- 得納好美(佳乃の先輩) - きむらゆき
- 山根志乃(看護師) - 安宅陽子
- 紺野(零細工場の社長) - 小倉一郎
- 菊池史代(大船のおばちゃん) - 樹木希林
- 福田仙一(山猫亭店主) - リリー・フランキー
- 二ノ宮さち子(海猫食堂店主) - 風吹ジュン
- 椎名和也(医師) - 堤真一
- 佐々木都(三姉妹の母) - 大竹しのぶ