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宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

彼女を知る、私も変わる――『劇場版 響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~』感想

アニメ 映画

【映画パンフレット】 劇場版 響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ 監督 石原立也  声 黒沢ともよ, 朝井彩加, 豊田萌絵, 安済知佳, 寿美菜子, 早見沙織, 茅原実里,

 

 『劇場版 響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~』をみに行きました。劇場の大音響で再び青春にノックアウトされる機会を得ることができ、大変よかったです。以下感想。

黄前久美子高坂麗奈の物語として

  劇場版は、テレビシリーズに新作カットを加えて1時間半に再構成したいわゆる総集編。もちろんテレビシリーズと比べると尺が短くなるわけで、エピソードの取捨選択がなされているわけですが、「黄前久美子高坂麗奈を知ることを通して変化する物語」を軸に据えて再構成されている、と感じました。

 上のリンクにある、テレビシリーズをみたときの感想で、以下のような文章を書いていてですね。

彼女の物語は、まずなによりも「悔しい」と思えるようになる物語であり、それは中学最後の大会、つまり物語の始まりの場所において高坂麗奈の立っていた場所に、黄前久美子も立つ、そういう物語である。

 その意味で僕が作品の核にある、と感じた部分がまさしく中心になっていて、それゆえ作品を短い時間で濃密に追体験できた、という感じがしました。加えて、劇場の音響で音楽を聴かせるということを意識してか、演奏シーンは全体的に尺が長くなっていて、アバンタイトルが中学時代のコンクールで『地獄のオルフェ』を演奏しているシーンなんかが追加されていたり、映画館に足を運んでよかったなと。

 そして声の新録も劇場版という、テレビとはまた違ったフォーマットの作品にふさわしい形でキャラクターが再解釈されていて、一本の映画にふさわしいトーンが漂っていたなと感じます。黄前久美子の物語の始まりを告げる高坂麗奈の「あんたは悔しくないわけ?」は、テレビ版よりさらにエモーショナルな雰囲気があったように感じたし、特に黄前久美子演じる黒沢ともよさんの演技は半端ではなかった。序盤は全体的に控えめだった声のテンションが徐々に上がっていくのは、短い尺で映さねばならない映画の中で、黄前久美子という人間が高校という新しい環境に馴染んでいっているという時間の経過を感じさせるし、クライマックスの「上手くなりたい」という魂の叫びはより強烈に胸を打つ。

 

 という感じで全体としては非常に満足したわけですが、若干食い足りない、と感じる部分もあるにはあって。それは劇場版の出来が云々という話ではなく、テレビシリーズが途方もない豊かさを持っていたがゆえに、その豊かさのいくらかを時間の都合でそぎ落とさなければならなかったが故の必然ではあると思うんですが、やっぱりテレビ版の含み持つドラマの、あるいはディティールの豊かさに思いをはせてしまうわけです。

 黄前久美子の物語の軸は、やはり高坂麗奈を知ること、それを通して「悔しさ」を知り、また「特別」になりたいという感覚を身に宿すことだと思うわけですが、テレビ版ではそれと密接に関連して、彼女が自ら選んだわけではないユーフォニアムを、自分の意志で再び選び取ること、すなわち「黄前久美子ユーフォニアムを好きになる物語」が語られてもいた、と思うのです。それを象徴するのが彼女が自室でユーフォニアムを吹いて家族の顰蹙を買う挿話だと思うんですが、そのような彼女と楽器との関係性を示す挿話がオミットされているように感じたのは残念ではありました。

 加えて、高校生が直面する受験というシリアスな現実の影がさす、黄前久美子の幼なじみである斎藤葵先輩をめぐるエピソードがカットされたことで、学校空間が部活を中心に編成される場としてのみ現前しているというような感触になってしまっているという感覚があってそれもちょっとなーと。

 それと、黄前久美子吹奏楽部に入部するまでの「なんとなく」流れていく時間が、やはりあっさりと流されていったりというのが、自分でも意外なほど残念で、僕はこの1話が結構好きだったのだなと改めて気づかされました。黄前久美子ユーフォニアムを吹くことになったことが多分に偶然によるものであることに象徴されるように、自分の人生とはいえ自分で選べない、そういうことが少なからずある。しかしそれ以上に、特に理由は説明できないけれど、「なんとなく」その道を選び取った、ということでも人生は左右されてゆくと思うのです。はっきり決然と選んだのではなく、そして強制的にそれを選び取らされたのでもない、「なんとなく」自分で選んだ道。その「なんとなく」が無数に積み重なり人の人生は成形されてゆくのでは、という気が僕はしていて、その「なんとなく」なされた選択の「なんとなくさ」みたいなものを、テレビ版 1話「ようこそハイスクール」ははっきりと映しとっている、という気がして、僕はそれがとても好きだったのだなと。その「なんとなくさ」を映しとっているからこそ、「なんとなく」ではなく、決然と「特別」たらんとすることを選び取る、黄前久美子のドラマがより鮮明に際立つのだ、とも。

 という感じで、尺の問題でそぎ落とされた部分にこそ、『響け!ユーフォニアム』とう作品の無限ともいえるほどの豊かさが含まれている、とも思うわけですが、それはともかく『劇場版 響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~』は僕の魂に強烈に響く作品でありました。2期も今から楽しみにしております。

 

関連

  劇場版の感想はなんというか食い足りなさみたいなことばっか書いてしまった気がしますが、劇場版のどこにやられたのかというと、テレビ版の感想で僕の今の時点で言いたいことは言い尽くしているような気もします。

2期の感想。

amberfeb.hatenablog.com

 

京都アニメーションは 「特別さ」をめぐる問題を語り続けている、という気が僕は勝手にしております。

 

 

 

 

 

【作品情報】

‣2016年

‣監督: 石原立也

‣原作:武田綾乃

‣脚本:花田十輝

‣キャラクター原案:アサダニッキ

‣キャラクターデザイン:池田晶子

美術監督:篠原睦雄

‣音楽:松田彬人

‣音楽制作協力:洗足学園音楽大学

‣アニメーション制作:京都アニメーション

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