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半世紀前の熱狂――『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK』感想

【チラシ2種付き、映画パンフレット】 ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years 監督 ロン・ハワード キャスト ポール・マッカートニーやリンゴ・スター ヨーコ・オノ レノン、ジョージ・ハリスン

 『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK』をみました。以下感想。

  本作はビートルズがライブ活動を行っていた1960年代前半に焦点をあてた公式ドキュメンタリー作品。ビートルズとして、あるいは関係者として、もしくは観客の一人として当時その熱狂に関わった人たちのインタビューが、ビートルズのライブ映像を背景に語られる、というような感じ。

 僕にとって、ビートルズってライブバンドってイメージが全然ないんですね。これって多分に世代的なものというよりも僕とビートルズの関わり方がそうであるだけって気がするんですが、少なくとも僕にとってはそうで、ライブ盤なんかも全然聞いたことないし、専らスタジオアルバムを通してしかビートルズを知らない。というか公式のライブ盤は今年までCD化されてなかったってのを今知りました。

LIVE AT THE HOLLYWOOD

LIVE AT THE HOLLYWOOD

 

  僕がビートルズに接したのは、オアシスがめちゃくちゃに影響を受けてるらしいと知って、ちょうどその時リマスターの発売なんかで盛り上がってたのでタイミングよくリマスター盤を聴き一通り、みたいな感じで出会ったんですが、リマスターのおかげもあってか全然古くねえじゃん!って感じで聴きこんだ記憶があります。そもそもビートルズの楽曲ってCMだったりなんだりで耳にしているからなんか初めて聴くアルバムでもそんな感じがしないというか、そういう点でビートルズに溢れた社会に生きていくなかでビートルズの楽曲が素晴らしく感じられるように規律訓練を受けているのではないかとさえ思うんですが、それはおいといて、映画をみて最も印象に残っているのは、僕がビートルズをいいなーと思うのとは全く別の次元で、当時の若者はビートルズに熱狂していたのだなーということ。この映画はライブバンドとしてのビートルズを捉えたフィルムであると同時に、ビートルズという現象、つまり彼らに熱狂した無数の人々を画面に刻み付けている。もう観客席にいたら黄色い歓声の音量が大きすぎて音楽を聴くどころじゃないんじゃなかろうかと。ライブで卒倒して運ばれていく少女の映像なんかもうすげえカルチャーショック。

 とはいえ、映画本編のあとに上映されたシェイ・スタジアムのライブ映像なんかみてると、熱狂している観客はあくまで一部で、少なくない観客は席に座って落ち着いて音楽を聴いている様子なのもわかるんだけれど、ドキュメンタリーが切り取っているのはあくまでも熱狂。はっきりいって常軌を逸しているとしか思われない人々がやたら印象的に挿入される。そういう意味ではカメラの視線は極めて恣意的ではあるのだけど、ビートルズと関係者にとってみれば、その熱狂こそが自身をとりまく圧倒的な現実だったんだろうな、というのを感じる。

 このような熱狂が果たして私たちの生きる現代においてありうるのだろうか、と考えると、これほどの熱狂はおそらくないだろう、とはっきりいって思う。時折映画のなかで公民権運動の様子が写されたりするが、60年代はパリ五月革命やら全共闘やら、若者が圧倒的な熱気で社会にコミットしていた時代でもあった。その意味で、この映画は熱き60年代という表象を提示しているのだけど、それが実像か虚像かはさておくにせよ、そういう日常とは隔絶した圧倒的な熱気を感じられる、そういう映画になっていることはこの映画が成功を収めていることの証左なのだろうなと思う。というわけで、大変楽しかったです。

 

 今年は音楽映画がアツいとおれのなかで話題に。

 

amberfeb.hatenablog.com

 

 

リボルバー

リボルバー

 

 

   オリジナルアルバムだったら『リボルバー』が好きなんですがリミックスとか諸々含めたら『ラブ』が一番好きかも。こういうこといったら原理主義者に殴られそう

LOVE

LOVE

 

 

【作品情報】

2016年

監督:ロン・ハワード