『コンレボ』みて以来高度成長期熱が自分のなかで高まっていて(『LAST SONG』はまだ全然視聴できてないんですが...)、その流れで『ALWAYS 三丁目の夕日』・『ALWAYS 続・三丁目の夕日』をみました。Huluの配信期限も近かったので。以下適当に感想。
『ALWAYS 三丁目の夕日』とその続編『ALWAYS 続・三丁目の夕日』は、昭和30年代前半の東京下町・夕日三丁目の人びとを主人公とした群像劇。昭和30年代初頭といえば、高度成長が始まりを告げた時代。建設中の東京タワーや白黒テレビや電気冷蔵庫などの所謂「三種の神器」の普及など、その時代を写し取った挿話をちりばめつつ、CGとセットによって見事に「古き良き」昭和を再現している。たぶん5年ぶりぐらいにみたのだけれど、10年ほど前に公開された作品にも関わらず美術周りは未だに古びていないと感じて、そういう古き良き時代へのフェティシズムをくすぐられる。特に二作品ともラストショットの美しさは素晴らしくて、思わず息を飲む。
その意味では「古き良き時代」としての昭和30年代というイメージになんとなく説得されそうになってしまうのだけれど、その「古き良き時代」を演出しようとする意図がドラマ部分にも遺憾なく侵入しているように感じられて、それによってドラマの部分は著しくうすっぺらいものになっているのでは?とすら思う。全体的に俳優の演技はオーバーリアクション気味に感じられて、劇伴の仰々しさもあいまって、職人芸によって現出した世界のなかで安っぽいテレビドラマのような掛け合いが展開されるという贅沢極まる感じになっていて結構苦痛を感じたんですが、それをさっぴいても、「古き良き時代」にすべてを回収する物語の展開がきつかった。
「古き良き時代」は、貧しかったりもしたけれども、それでも人々のあいだには「絆」があったんだよな...みたいな。うんうんわかるよその気持ち。たしかに地域の結びつきなんかは現在よりあったんでしょう。でもその結びつきの強さははたして徹底的にポジティブなものなの?『続・三丁目の夕日』では集団就職の負の側面―離職率は非常に高かったーに触れられるけれど、総体的には地方から上京してきた人間も下町の人々の「絆」のなかに包摂されてゆくという構図が優越している感じもして。「ノスタルジー」によってある一時代を美化しすぎでは?と思ってしまうわけです。
Wikipediaによると、川本三郎は「単なるノスタルジー」という批判に対してこう返したという。
大きな過去は歴史として尊重されるが、祖父母や父母が生きてきた近過去は否定される。おかしな話である。近過去を大事に思い出す。それは自分の足元をしっかりと固めることであり、亡き人々を追悼することでもある。
— 川本三郎 「『ALWAYS 三丁目の夕日』のノスタルジーのことなど」『映画を見ればわかること2』
Wikipediaにこんな記述があるのがなんとも不思議なんだけれど、川本の反論はここだけ取り出すとはっきり言ってピント外れで、「単なるノスタルジー」が悪いっていうじゃなくて、「大事に思い出」される近過去が過剰に美化されていることが問題なんでないのかと思うわけです。
北田暁大が『広告都市東京』のなかで述べていたことだと思うんですが、この作品自体が、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』劇中の20世紀博と同様の機能を果たしているのではないか、と思うわけです。 『ALWAYS 三丁目の夕日』は公開時にすでに乗り越えられていたという。もう言われつくした類の感想だと思うんですが、文字を打つリハビリのために書いてみました。はい。
~~が描かれてないからダメ、って言い方は嫌いなんですが、この時代にたしかに存在感を放っていたはずの「アメリカ」がきれいさっぱり不在なことにも、時代に対するセンスがなーと。その『コンレボ』はry
それとこの作品だと日本人はあくまで「戦争の被害者」として表象されてるのも気になった。昭和30年代は戦争責任云々ってより被害者意識のほうが先行していた時代だったっていうのもあると思いますが。
『続三丁目の夕日』の冒頭のゴジラ、しっぽのうねうね具合がシンゴジラっぽいなと思ったりしました。
ALWAYS三丁目の夕日/続・三丁目の夕日/三丁目の夕日'64 三作品収納版(Blu-ray)
- 出版社/メーカー: バップ
- 発売日: 2012/07/20
- メディア: Blu-ray
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (8件) を見る
【作品情報】
【作品情報】
‣2005年/日本
‣監督: 山崎貴
‣出演
- 茶川竜之介:吉岡秀隆
- 石崎ヒロミ:小雪
- 古行淳之介:須賀健太
- 鈴木則文:堤真一
- 鈴木トモエ:薬師丸ひろ子
- 鈴木一平:小清水一揮
- 星野六子:堀北真希
- 大田キン:もたいまさこ
- 鈴木大作:平田満
- 中山武雄:浅利陽介
- 宅間史郎:三浦友和(特別出演)
- 三郎:高橋征也
- 雄一郎:持丸加賀
- 精肉店・丸山:マギー
- 自転車屋・吉田:温水洋一
- 電気屋:木村祐一
- 氷屋(水野):ピエール瀧
- 郵便配達:神戸浩
- 中島巡査:飯田基祐
- 不動産屋:松尾貴史
- 劇場・支配人:益岡徹
- 借金取り:中村有志
- 通行人:羽鳥慎一(当時日本テレビアナウンサー)
- 富山の薬屋:村松利史
- 小学校の先生:岡田薫
【作品情報】
‣2007年/日本
‣監督: 山崎貴
‣出演
- 茶川竜之介:吉岡秀隆
- 石崎ヒロミ:小雪
- 古行淳之介:須賀健太
- 鈴木則文:堤真一
- 鈴木トモエ:薬師丸ひろ子
- 鈴木一平:小清水一揮
- 星野六子:堀北真希
- 大田キン:もたいまさこ
- 鈴木大作:平田満
- 鈴木美加:彩夢
- 中山武雄:浅利陽介
- 宅間史郎:三浦友和(特別出演)
- 丸山精肉店:マギー
- 吉田自転車:温水洋一
- 王手興産社長・川渕康成:小日向文世
- 社長秘書・佐竹幸弘:小木茂光
- 郵便配達員:神戸浩
- 中島巡査:飯田基祐
- アイスキャンディー屋(水野):ピエール瀧
- 山村先生:吹石一恵
- 牛島:福士誠治
- 山本信夫:上川隆也
- 大橋:渡辺いっけい
- 新聞記者:東貴博
- 新聞記者:羽鳥慎一(日本テレビアナウンサー)
- 踊り子・梅子:手塚理美
- 踊り子・メリー:貫地谷しほり
- 踊り子・チエミ:藤本静
- 松下忠信:浅野和之