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『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』感想

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 『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』をみました。『エウレカ』のよい視聴者だったことってない(TVシリーズ放映時に飛び飛びでみていた)のだけど、いやこれはそんなこと関係なく傑作だったのでは。劇場で視聴してからだいぶたっているので記憶は薄れつつありますが、以下感想。

  我々の現実とよく似た世界。謎の侵略者によって、人類は滅亡の淵に立たされているという。その侵略者の名はエウレカ。七番目のエウレカエウレカセブンが東京に侵略しようというまさにその時、エウレカセブンのなかに精神を侵入させ、対抗しようと試みるものたちがいた。ダイブする大役を担う少女、石井・風花・アネモネ。彼女が出会う世界は、我々の現実とは大きくかけ離れているが、しかしどこか見知った世界だった。

 アネモネの現実≒我々の現実、エウレカセブンの内部≒TV版『交響詩篇エウレカセブン』の世界、というようなかたちで、極めて明示的なメタ構造になっていて、アネモネが『交響詩篇エウレカセブン』の世界に介入し、それが我々の知る『交響詩篇エウレカセブン』の物語を破局に導く≒レントン・サーストンを殺害することで、現実世界の破局が繰り延べにされる、というような仕組みになっているらしいということがわかる。

 エウレカセブン内部の世界は、TV版をコラージュしたバンクシーンとおぼしき場面(ほんとうにバンクかは定かでないが、画面比率がスタンダードサイズに切り替わることであたかもTV版をみているかのような錯覚に陥る)によって構成され、TV版のロボット作画が劇場の大画面に十二分に耐えうる凄まじさであったことを今さらながら思い知らされるが、そうしたロボットアクションからは意図的にカタルシスが排されているような気配があり、それが彼女が彼女の手を取って世界を駆け巡るクライマックスの爽快感と対になっているような気がする。

 何度も何度もレントンを殺害され、ボーイミーツガールによる救済のはしごを否定されて絶望する少女に、また別の少女が手を差し伸べる。ボーイミーツガールを別の仕方で反復し裏切ってみせ、そして軽々と飛翔してみせる。クライマックスの疾走と飛翔は、それが作画でなく3DCGのキャラクターによってなされるがゆえに、『交響詩篇エウレカセブン』を支えた強烈無比な作画の快はそこに宿ってはいない。しかし、必死で走り、そして軽やかに飛ぶ彼女たちの姿には、作画の力とはまた別様の何か強烈な力が宿っているのであり、そうして『交響詩篇エウレカセブン』を超え出ていくパワーを作品に与えている、気がする。たぶん大事なのは、どんなやり方でも、ドアを開けてみせることなのだ。