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照れと雑味とひたむきさ────アニメ『ウマ娘 プリティーダービー』感想

第12R「夢の舞台」

 劇場版公開で盛り上がっているところですが、いまさら『ウマ娘 プリティーダービー』シーズン1、みました。以下、感想。

 我々の現実世界における競走馬の名前を受け継いで生まれるという、ウマ娘。彼女たちはそれぞれの夢に向かって切磋琢磨し、レース場でしのぎを削っていた。北海道で生まれ育ち、ほかのウマ娘と接したこともなかったスペシャルウィークは、東京にある日本ウマ娘レーニングセンター学園、通称トレセン学園に転校し、日本一のウマ娘を目指す!

 アニメやソーシャルゲームを中心に展開される『ウマ娘 プリティーダービー』。その先陣を切ったのが2018年に放映されたTVアニメ。放映中のCMでも予告されていたソーシャルゲームのサービス開始は延びに延び、結局アニメ放映からおよそ3年後、2021年に開始することになる。わたくしは熱心なプレイヤーではないが、射幸心をあおって課金させようとするシステムには閉口するものの、キャラクターのモデリングとモーションのすばらしさ、シンプルながら(明確に既視感はあるものの)おもしろみのあるゲームシステムを楽しんでいる一人である。

 あらためてこのシーズン1をみてみると、肩の力を抜いて楽しめるウェルメイドな萌えアニメのような感触と、現実上の競走馬のドラマを下敷きにした物語のひたむきさとがいい塩梅のバランス感覚で同居した、不思議なアニメだという気がした。

 たとえば、昨年公開された『ROAD TO THE TOP』もまたその両者を同居させつつ、しかしドラマ上でのひたむきさが全体の印象としては強烈なものになっていた。たとえば、TVアニメ版のトレーナーはセクハラまがいのふるまいや粗雑な言動でウマ娘たちに制裁を受ける…というある種の萌えアニメの「お約束」を踏襲させられているような面があるが、『ROAD TO THE TOP』のトレーナーである壮年の男性はいかにもメンター然としたたたずまいである。

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 そもそも「競走馬を女性化させて競争させ、アイドルのごとくライブをさせる」という作品世界を立ち上げなければならなかったこのシーズン1では、その根幹に対する照れのようなものが随所に感じられ、それがこの作品のバランスを形づくっているのではないか、という気がした。田舎から上京したスペシャルウィークに対してほかのウマ娘たちが教えてあげる、という構図で作品世界の紹介をするんだが、それにしたってもっと親切にトレーナーが教えてあげなさいよ!と思うことはしばしばある。

 そのあたりのある種の雑味は、たとえば作画の印象とのつながるものである。美少女キャラクターが大量に登場するがゆえに、キャラクターの表情の作画は場面によって精粗があり、端的に崩れていると感じさせる場面はときたま目につく。『ROAD TO THE TOP』はそうした作画上の問題を、キャラクターの描画をファジーにすることでカバーしていたが、シーズン1ではそのあたりが必ずしもうまくクオリティコントロールされていないと感じる。

 しかしそれが瑕疵にならないような鷹揚な感じが作品全体に漂ってもいて、萌えとコメディ、そしてまじめなドラマのバランスは「これでいいのだ」と思う。

 明日は劇場版をみにいく予定ですが、いまから楽しみです!!!!!