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ファジーな王道────『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP 劇場用再編集版』感想

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 『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP 劇場用再編集版』を駆けこみでみました。明日からはもう劇場版も公開なんですね。以下、感想。

 我々の現実世界の競走馬の名前を受け継いで生まれる「ウマ娘」たちが、レースに鎬を削る世界。ウマ娘たちが通うトレセン学園でクラスの委員長を務めるナリタトップロードは、クラスメイトや近所の商店街の人たちの期待を受けて、ライバルたちと切磋琢磨していく。

 ゲームやアニメを中心に展開される『ウマ娘 プリティーダービー』。本作は2023年5月にウェブで全4話が公開されたアニメーションを再編集して劇場公開したもの。テレビアニメは1期はP.A.WORKS、2期・3期はスタジオKAIが制作スタジオとしてクレジットされていたが、この『ROAD TO THE TOP』はCygamesPicturesによる制作。監督は同スタジオ作品で演出を務めていた廖程芝。

 わたくしウェブアニメ版は未見だったのだが、無料で公開されていたとはにわかに信じがたい、劇場のスクリーンに映ってもまったく見劣りしない画面のリッチさに驚く。美少女キャラクターの描写は結構ファジーで、それを許容する全体のトーンによって、多くのキャラクターが画面を賑やかすにもかからわず破綻した印象がまったくない。このあたりの手つきは、A-1 Pictures制作・錦織敦史監督による『THE IDOLM@STER』を想起した。

 多くのキャラクターが否応なしに映るレースシーンでは、ロングショットの際にはキャラクターを3DCGで描写しているようにもみえたが、それが作画との齟齬を全くきたしていない(時によってはシームレスに作画に切り替わっているようにも思える)のが見事。それ以外の場面では主要キャラクターにフォーカスしクオリティコントロールをしているように思えたが、それが貧乏くさくみえず、画面が貧相になっていないのがすばらしい。いわば「徒競走」というシンプル極まる競技を映すにあたって、ギアが変わる瞬間を強調して外連味ある勝負が演出されていたが、これは成功していたと思う。

 お話はまさしく王道。主人公のナリタトップロードはまじめな優等生で、たとえばテレビシリーズであればもう少しエキセントリックでないと間が持たない気もするのだが、その素朴さが100分ほどの尺にマッチして、雑味のないお話をてらいなく語ることに成功していたように思う。ナリタトップロードとクラシック三冠を分け合うかたちになったアドマイヤベガテイエムオペラオーの三人にフォーカスしたつくりも、三者三様の魅力がしっかり描かれていてよかったですね。

 結部には劇場版の予告が流れる構成だが、劇場版ではより作画のファジーさが高まっているような印象を受けて、一層楽しみですね。遠からず見に行きたいですね。