2021年は、何もする気がおきなかったり、うまく頭がはたらかなかったりする時間が例年になく多かった気がします。それはオリンピック強行に象徴されるような政治の無茶苦茶ぶり、あるいはそれをめぐるほとんど宗教戦争のようなありさまに心底うんざりしていたからかもしれません。でも、それでも人生とか社会とか世界とかを、いまよりよくしようとする意志は捨てちゃならないと思うので、なんとかやっていきたいです。
昨年のふりかえりはこちら。
2021年新作映画ベスト10
- 『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』(庵野秀明総監督)
- 『サイダーのように言葉が湧き上がる』(イシグロキョウヘイ監督)
- 『ノマドランド』(クロエ・ジャオ監督)
- 『偶然と想像』(濱口竜介監督)
- 『最後の決闘裁判』(リドリー・スコット監督)
- 『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督)
- 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(村瀬修功監督)
- 『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(古川知宏監督)
- 『ラストナイト・イン・ソーホー』(エドガー・ライト監督)
- 『唐人街探偵 東京MISSION』(チェン・スーチェン監督)
2012年の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』から9年、制作上の紆余曲折とコロナ禍によって公開が伸びに伸びてようやく今年3月8日に公開された『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』は、おそらく空前にして、絶後の仕方でつくられたアニメであることに疑いはない。疑いはないが、しかし同時に、ありえたかもしれない別の『シン・エヴァンゲリオン』についてとめどなく思いを巡らせてしまいもする。メタな文脈を導入せず『新劇場版』というまとまりとして過不足なく完結してほしかった。『EUREKA』の村木靖によるメカアクションをみて、このレベルの作画で躍動するエヴァンゲリオンがみたいと思った。しかし、『新世紀エヴァンゲリオン』以来、四半世紀にわたって続いてきたキャラクターのドラマの完結、それに立ち会えたということ。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』にぶっ飛ばされたわたくしの人生に、ひとつの区切りをつけてくれたこと、そういう諸々があるので、2021年の1本としてこれを選ばないのはわたくし自身の2021年への裏切りだろう。よって1位!です。『破』を8回、『Q』を5回劇場でみて、この『シン』は結局10回足を運びました。もう人生でそんなに同じ映画を見に行くことはないでしょう、たぶん。
『サイダーのように言葉が湧き上がる』は、「なにもない」場所であってもそこに鮮やかに意味を見出していけるじゃんみたいなことを、スマートに教えてくれる素晴らしい映画でした。かつての自分がなんか救われたような気になったという意味で、代えがたい魅力がありました。
一方で『ノマドランド』はその対極ともいえるような気がして、アメリカという大地の未来や希望のなさを写し取り、しかし現在という場所を未来や希望などなしになんとか支える何かが映っている、とんでもないものを見せられた体験でした。
『ドライブ・マイ・カー』、『偶然と想像』と濱口竜介監督の新作を2本もみられるとは、幸運というほかないでしょう。『ドライブ・マイ・カー』はこれまでのフィルモグラフィの記憶を喚起するベスト盤のような調子でしたが、コロナ禍によって頓挫したと聞く韓国ロケが敢行できていたら、もっと強烈なロケーションが画面に現れていたのでは...と思うのだけど、ほんとうにリッチな時間を過ごしたことは確かです。しかし、長編を撮るたびに『ハッピーアワー』と比較されてしまうことの恐るべき不幸よ。短編集の『偶然と想像』のほうが『ハッピーアワー』の感触が強くて、惹かれるところ大でした。
リドリー・スコットが健在ぶりを大いに示した『最後の決闘裁判』は、中世の暗闇のなかに我々自身が生きる世界が見出される、極めて現代的な歴史劇。かつて自身が『キングダム・オブ・ヘブン』で気高く価値あるものとして表象してみせた西洋中世を、こういう仕方で再表象してみせたのは、ある種の責任の取り方だろうか。その姿勢は『ラストナイト・イン・ソーホー』とも重なるかもしれません。
実写映画の空気を存分に吸ってアップデートし、巨大な物体が高速で動く空間をスタイリッシュに演出した『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は、今後のロボットアニメのメルクマールになりうる快作。アムロ・レイにもシャア・アズナブルにもなれない、歴史が終わったあとの半端者でしかない男の物語をいかに語るか、というのは極めて興味深い課題だと思います。
TV版の類型的なキャラクターが「ほんと」だと思ってた?と我々を挑発する『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』は、あまりに堂々たる無法ぶりだったのでわたくしの負け。
『唐人街探偵 東京MISSION』はとにかく日本列島のコンテンツに親しんだ人間がめちゃめちゃ楽しくなれる映画なんで、みなさんみてくれ。
特に上半期、全然劇場に行けなかったので見逃した作品も多いんですが、こんな感じです。
2021年みた映画まとめ
- 『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』(庵野秀明総監督)
- 『ガールズ&パンツァー 最終章』第3話(水島努監督)
- 『モンスターハンター』(ポール・アンダーソン監督)
- 『映画大好きポンポさん』(平尾隆之監督)
- 『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(古川知宏監督)
- 『劇場版 Fate/Grand Order 神聖円卓領域キャメロット 後編 Paladin; Agateram』(荒井和人監督)
- 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(村瀬修功監督)
- 『ノマドランド』(クロエ・ジャオ監督)
- 『Arc アーク』(石川慶監督)
- 『ゴジラvsコング』(アダム・ウィンガード監督)
- 『竜とそばかすの姫』(細田守監督)
- 『唐人街探偵 東京MISSION』(チェン・スーチェン監督)
- 『サイダーのように言葉が湧き上がる』(イシグロキョウヘイ監督)
- 『親密さ』(濱口竜介監督、公開は2012年)
- 『ブラック・ウィドウ』(ケイト・ショートランド監督)
- 『Fate/Grand Order -終局特異点 冠位時間神殿ソロモン-』(赤井俊文監督)
- 『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(ジェームズ・ガン監督)
- 『フリー・ガイ』(ショーン・レヴィ監督)
- 『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督)
- 『孤狼の血 LEVEL2』(白石和彌監督)
- 『岬のマヨイガ』(川面真也監督)
- 『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(デスティン・ダニエル・クレットン監督)
- 『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(キャリー・ジョージ・フクナガ監督)
- 『キャッシュトラック』(ガイ・リッチー監督)
- 『DUNE/デューン 砂の惑星』(ドゥニ・ヴィルヌーブ監督)
- 『燃えよ剣』(原田眞人監督)
- 『最後の決闘裁判』(リドリー・スコット監督)
- 『アイの歌声を聴かせて』(吉浦康裕監督)
- 『エターナルズ』(クロエ・ジャオ監督)
- 『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』(京田知己監督)
- 『ラストナイト・イン・ソーホー』(エドガー・ライト監督)
- 『フラ・フラダンス』(水島精二総監督・綿田慎也監督)
- 『マトリックス レザレクションズ』(ラナ・ウォシャウスキー監督)
- 『劇場版 呪術廻戦 0』(朴性厚監督)
- 『偶然と想像』(濱口竜介監督)
計35本。
自宅視聴まとめ
- 『パラサイト 半地下の家族』ポン・ジュノ監督、2019年
- 『愚行録』石川慶監督、2017年
- 『歩いても 歩いても』是枝裕和監督、2008年
- 『ヘレディタリー / 継承』アリ・アスター監督、2019年
- 『ジョジョ・ラビット』タイカ・ワイティティ監督、2019年
- 『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』レミ・シャイエ監督、2016年
- 『透明人間』リー・ワネル監督、2020年
- 『劇場版 エースをねらえ!』出崎統監督、1979年
- 『スターリンの葬送狂騒曲』アーマンド・イヌアッチ監督、2017年
- 『ゴールデンスランバー』ノ・ドンソク監督、2018年
- 『祈りの幕が下りる時』福沢克雄監督、2018年
- 『フィールド・オブ・ドリームス』フィル・アルデン・ロビンソン監督、1989年
- 『悪人伝』イ・ウォンテ監督、2019年
- 『スプリガン』川崎博嗣監督、1998年
- 『ミッドナイト・ラン』マーティン・ブレスト監督、1988年
- 『マイル22』ピーター・バーグ監督、2018年
- 『ジョン・ウィック:チャプター2』チャド・スタエルスキ監督、2017年
メモした限りでは17本。ぜんぜんみてないわね。
2021年にみたアニメ
- 『THE IDOLM@STER』(錦織敦史監督、2011年)
- 『モブサイコ100』(立川譲監督、2016年)
- 『ID :INVADED イド:インヴェイデッド』(あおきえい監督、2020年)
- 『おちこぼれフルーツタルト』(川口敬一郎監督、2020年)
- 『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(庵野秀明総監督、1997年)
- 『ACCA13区監察課』(夏目真悟監督、2017年)
- 『新世界より』(石浜真史監督、2012-3年)
- 『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(古川知宏監督、2018年)
- 『true tears』(西村純二監督、2008年)
- 『女子高生の無駄づかい』(高橋丈夫総監督・さんぺい聖監督、2019年)
- 『月がきれい』(岸誠二監督、2017年)
- 『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』(高橋敦史監督、2021年)
- 『終末のワルキューレ』(大久保政雄監督、2021年)
- 『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』(井上圭介監督、2020年)
- 『ケモノヅメ』(湯浅政明監督、2006年)
- 『L/R -Licensed by Royal-』(川崎逸朗監督、2003年)
- 『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』(増井壮一監督、2018年)
- 『オッドタクシー』(木下麦監督、2021年)
- 『イヴの時間』(吉浦康裕監督、2008-9年)
- 『呪術廻戦』(朴性厚監督、2020-1年)
- 『ハイキュー‼』(満仲勧監督、2014年)
含再見。『新世界より』、『モブサイコ100』、『アイマス』等々、2010年代の落穂拾いをやや進めました。今年のアニメでは『オッドタクシー』はまじ負けましたという感じ。
2021年の10冊
- 米澤穂信『Iの悲劇』
- 吉見俊哉『五輪と戦後:上演としての東京オリンピック』
- 小関隆『イギリス1960年代 ビートルズからサッチャーへ』
- ハンナ・アーレント『全体主義の起原』
- 小川さやか『チョンキンマンションのボスは知っている』
- エラリイ・クイーン『十日間の不思議』
- 大塚英志『「暮し」のファシズム 戦争は「新しい生活様式」の顔をしてやってきた』
- 劉慈欣『三体III 死神永生』
- ダシール・ハメット『血の収穫』
- 白井聡『武器としての「資本論」』
読書メーターによると、こんな感じだったそうです。
読んだ本の数:126冊
読んだページ数:36910ページ
ナイス数:1297ナイス
各月のまとめ
- 2021年1月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2021年2月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2021年3月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2021年4月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2021年5月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2021年6月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2021年7月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2021年8月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2021年9月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2021年10月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2021年11月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2021年12月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
思ってたより映画みられなかったし本も読めなかったんですけど、あきらかにゲームにうつつを抜かしてたせいですね。『FF15』と『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』はクリアできてよかったっす。
今年は全然文章書けなかったんですけど、2022年こそは...という気持ちでいます。2019年の暮れから構想中の『氷菓』論、どうにかかたちにしたいですね。アニメ放映から10年(10年!)の節目ですし。