ふふふ。
先月の。
印象に残った本
一冊選ぶなら笠井潔『群衆の悪魔』。
読んだ本のまとめ
2021年5月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:4624ページ
ナイス数:88ナイス
https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly
■歴史戦と思想戦 ――歴史問題の読み解き方 (集英社新書)
近年、巷を跳梁跋扈する歴史修正主義のでたらめぶりを指摘し、またそのありようが戦中の「思想戦」と重ね合わされて論じられる。本書のえらさは、歴史修正主義者たちの主張は結論ありきで事実を無視している、という自明のことを、丹念に指摘したこと。書き手にとってはそれは退屈な作業だったのではと推察するが、しかし誰かがきちんとやらねばならないことをコンパクトなかたちでテクストにした誠実さに頭が下がります。
読了日:05月03日 著者:山崎 雅弘
https://bookmeter.com/books/13745925
■世界の危険・紛争地帯体験ガイド (講談社SOPHIA BOOKS)
いや、これはすごい本にゃんね。バス、タクシー移動の際の危険、誘拐されたらどうするか、やばい病気はなにか、みたいな総論ののち、北朝鮮やミャンマーなどそれぞれの国で注意すべきことを教えてくれる。随所に挿入されるルポ風のエッセイもめちゃくちゃおもしろい。本書の発行は1999年なので情報は古びているところもあるだろうが、関係なしにおもしろくぱらぱらめくりました。これで旅行代わりというわけです。
読了日:05月03日 著者:ロバート・ヤング ペルトン
https://bookmeter.com/books/62454
■日本の百年〈3〉強国をめざして (ちくま学芸文庫)
本書が扱うのは1889年の明治憲法発布から、日清戦争での勝利を経た19世紀末のおよそ10年間。資料を広く収集し当時の人々の声を丹念に取り上げているのがこのシリーズのおもしろみだが、とりわけこの巻では江戸時代的なものが後退し、新しいものが徐々に浸透してゆくモーメントが強調されていたと感じる。結部にて触れられる、工場労働者の悲惨、廃娼運動、そして足尾銅山の鉱毒問題など、まさに近代の軋みという感じやなあと思う。
読了日:05月09日 著者:松本 三之介
https://bookmeter.com/books/1657199
■動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)
久方ぶりの再読。「理想の時代」から「虚構の時代」を経て「動物の時代」へ、という見立てはやや牽強付会の感が強いが、それでも本書はオタク評論のステージを設定したということが決定的な事件だったのだなと改めて思う。そういう意味ではすでに古典ですね。
読了日:05月09日 著者:東 浩紀
https://bookmeter.com/books/568783
■ゲーム的リアリズムの誕生~動物化するポストモダン2 (講談社現代新書)
東の仕事の可能性の中心は、本書から『セカイからもっと近くに』に延びるラインにあると信じて疑いません。久しぶりに再読しましたが、本書で提示される「ゲーム的リアリズム」という視角は、スマートフォンによってゲームが我々の生活とべったり同期している現在にあって今なお何か有益な示唆を引き出しうると思う。
読了日:05月09日 著者:東 浩紀
https://bookmeter.com/books/568785
■「暮し」のファシズム ――戦争は「新しい生活様式」の顔をしてやってきた (筑摩選書)
我々の「日常」の起源は戦時下にあり!という見立てはやや牽強付会の感もあるが、花森安治や太宰治の実践から、露骨な戦争協力ではないソフトな動員の回路をみてとる手際はお見事。新聞4コマの「家庭」と「町内」のフォーマットの完成を「翼賛一家」にみる、というのはとりわけ印象に残る。
読了日:05月12日 著者:大塚 英志
https://bookmeter.com/books/17516390
■未完のファシズム―「持たざる国」日本の運命 (新潮選書)
主に陸軍で指導的立場にあった人物たちの思想を、第一次世界大戦のインパクトを受けて、「持たざる国」としての生存戦略を提示しようとしたものとして読む試み。陸軍の精神主義の根源はある種の顕教と密教のうちの顕教の部分だけが継承された結果と見立てたり、皇道派と統制派の対立を別の視角から読み替えてみせたりというセクションなど特に印象にのこりました。雑誌連載をまとめたものなのでやや散漫、というか壮大なビジョンの一断面を提示しているような印象です。
読了日:05月14日 著者:片山 杜秀
https://bookmeter.com/books/4806144
■大学の起源
「12世紀ルネサンス」で知られる著者による大学論。もとになる講義が行われたのは今からおよそ100年前。現代に至る大学の道筋を…ということであれば吉見俊哉『大学とは何か』を読めばいいのではとは思うが、大学の核心とは教員と学生のコミュニティなのだと喝破する本書が、学生運動を経て傷ついた大学人を(初訳当時の1970年において)勇気づけたのだろうか。史料も付されていて、学生の生活のディテールなど興味深く読みました。
読了日:05月19日 著者:チャールズ・ホーマー ハスキンズ
https://bookmeter.com/books/306685
■官僚制批判の論理と心理 - デモクラシーの友と敵 (2011-09-25T00:00:00.000)
近年つとに高まる官僚制批判は、そもそも官僚制概念が形作られた当時からなされていたものだった。その官僚制批判の思想史的な系譜をたどる。デモクラシーの敵として攻撃され、かつ新自由主義的な立場からも批判されたことで、両者が官僚制批判という視角からは合流してしまう、というロジックを跡付けたところがとりわけ面白く読みました。
読了日:05月23日 著者:野口 雅弘
https://bookmeter.com/books/4046992
■群衆の悪魔 上 (デュパン第四の事件) (創元推理文庫)
1848年のパリを舞台に、ポーの生み出した探偵デュパンが不審な殺人の謎を追う。バルザックやジラルダン、ブランキなどなど錚々たる面々が場面を賑やかし、大変楽しい。衒学趣味が鼻につかないといえば嘘になるが、大変楽しく読みました。
読了日:05月28日 著者:笠井 潔
https://bookmeter.com/books/639160
■群衆の悪魔 下 (デュパン第四の事件) (創元推理文庫)
ワトソン役の正体については意表を突かれたというしかなく、しかもそれが作品全体における探偵の役目を支えているという意味で、いやはや参りました。探偵と大量死とを密接に結びつける笠井の探偵論にとって、プレ第一次世界大戦としての19世紀とは何か、というのご彫琢されているという意味でも大変おもしろく読みました。
読了日:05月28日 著者:笠井 潔
https://bookmeter.com/books/639161
■大学改革の迷走 (ちくま新書)
昨今の大学改革がいかに有名無実、それどころか大学を疲弊させてきたことを指摘。PDCAサイクルに代表される企業の論理を無批判に導入してきたこと、シラバスなどの「舶来品」をありがたがる風土、文科省と大学の面従腹背、あるいは過剰同調などの関係性の病理などなど、およそ500ページにわたって展開される大学改革批判。たいへんおもしろく読みました。
読了日:05月29日 著者:佐藤 郁哉
https://bookmeter.com/books/14552439
■平成音楽史
2018年に放映された番組の書籍化。なんといっても書籍は音は出ねえ!といううらみはあるが、平成の始まりから末期までのクラシック音楽のトレンドの変遷がわかった気になってよかったです。ふたつの震災という巨大な出来事、教養主義が完全に解体するまでの過程。
読了日:05月29日 著者:片山杜秀,山崎浩太郎,田中美登里
https://bookmeter.com/books/13666523
近況
運命の再生産、あるいは冷たい幾原邦彦——『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』感想 - 宇宙、日本、練馬
来月の。