『true tears』をいまさらみました。どうもこの作品の温度感のようなものが苦手で、途中までは何度もみてたんですが、今回ようやく最終回までたどり着きました。以下、感想。
海沿いの街を舞台に、高校生の男女の恋愛を描く。同名のゲームソフトを原作としつつも、キャラクター等はオリジナルという奇妙な建付け。それゆえシリーズ構成の岡田磨里の作家性がとりわけ強く出ていると感じさせる。2008年に放映された本作以後、同年の『とらドラ!』から10年代の『あの花』等々、大きな存在感を放つ脚本家の一人となった岡田だが、この『true tears』ではその作家性がまだ十分に洗練されていないと感じさせる。劇中作が大きな役割を果たし、また幼さを感じさせる少女が作品の中心にあるという点で、『心が叫びたがってるんだ。』の原型のようにも感じる。
この『true tears』で重要な役割を果たす少女の言動は極めてエキセントリックだが、それはたとえば作品のなかでコメディの類として処理されうる涼宮ハルヒ的なエキセントリックさというよりは、より生々しい居心地の悪さを喚起するエキセントリックさである。その後の岡田の手掛けた作品では、おおよそそのようなエキセントリックさはここまでの居心地の悪さは感受されないように思うし、それがこの作品からわたくしを遠ざけた理由の一つなのかもしれない。
また、仲上眞一郎の母親が、中盤でヒロインに対して理不尽とも思える態度をとるが、この態度の不気味さは岡田自身のオブセッションが露骨に表出したものとも感受されるが、しかし関口佳奈美によるキュートなキャラデザインとは不調和をきたしているようにも思われる。
こうした生々しさが、高校生を描く青春ものとしては異質であるがゆえに、この作品に惹かれる人が一定数いるということはわかるし、その生々しさを作品と調和させうる手際にこそ、岡田磨里という脚本家の洗練をみてとることもできるだろう。
作中で、言語を絶した「なにか」が仮託されている涙。兪としてはあまりに素朴という気もするが、その素朴さに内実をあたえたのは、作品世界を居心地悪くするほどの生々しさなのだろう。
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2010年代振り返り、『ここさけ』を入れてもよかったなあという気もするのだけど...。