宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

太平洋のいかれたヤンキー——『ゴジラvsコング』感想

【輸入盤CDR】ゴジラVSコング(Godzilla vs Kong)

 『ゴジラvsコング』をみて脳細胞が死滅し偏差値が2になった。以下、感想。作品の核心というかびっくりポイントに触れています。

  ゴジラとギドラの、怪獣界の、いや地球の覇権をかけた決戦から数年。あるいは、ベトナム帰りの男が髑髏島を去ってから数十年。それまで人類には目もくれなかったゴジラが突如多国籍企業の研究所を襲い、一方コングは髑髏島で囚われの身となっていた。人間どもはコングを地底世界への水先案内人として利用しようとしていたが、そこにゴジラの脅威が迫る。

 2014年の『GODZILLA ゴジラ』にはじまるモンスターバースの4作目。監督はNetflix版『Death Note/デスノート』のアダム・ウィンガード。これまで、ギャレス・エドワーズやマイケル・ドハティが、神のごとき超越的な存在として演出されてきた怪獣は、この映画ではある種のキャラクターとして立ち現れている。その方針は冒頭の優雅なコング様を映すシークエンスで我々に説明される親切さ。コングもゴジラも、その顔がスクリーンに大写しになるカットがしばしばみられ、表情豊かに対決を繰り広げる。やや優しさをまとったような視線を少女にむけるコングにたいして、ゴジラはいかにも不機嫌そうな面構えを崩さず、コングにガンたれるヤンキーじみている。一方バトルでは、むしろコングさんのほうがルール無用で得物を振り回しているのがウケるわけですけど。

 この映画はこの主演二人を魅力的に描くことにその力すべてを注いでいるといっても過言ではなく、人間どもはぎりぎり狂言回しとして存在を許されているといっても過言ではない。渡辺謙が演じた芹沢博士の息子役として出演する小栗旬は、芹沢の息子であるということも特段説明されず、芹沢博士のみせたゴジラへの異様な執着のような行動原理もまったく開陳されない。

 一方、陰謀論に傾倒するYouTuber(いや正確にはYouTuberではないんだが)が、ティーンエイジャーを感化して出来事の渦中に飛び込んでいく展開は、いやいやさすがに教育的にやばくないか?という感じがする。しかも感化されるティーンエイジャー、前作の主要人物だし。その母上もやばみのある環境テロリズムに加担していたわけで、なんというかそういう文脈の上に配しちゃうとさすがに気の毒ではないか。しかも陰謀論者の唱える陰謀が、まさにマジで「真実」であったことが証立てられてしまうのは、ちょっとまずいのではないか...という感じを強く持った。

 しかしそうした人間どものくだらない営為は、せいぜいコングさんとゴジラさんという太平洋規模のいかれたヤンキーたちにつかの間の共闘を演じさせるための役割程度しかないのは潔い。ギドラの頭蓋骨を利用してつくられたメカゴジラが、もうゴジラさんとコングさんお二方双方を立てて、気持ちよく帰っていただくための道具だと隠そうともしない感じもまた素晴らしい。いいんだ、このトーンでメカゴジラ出して...みたいなので笑顔になってしまいました。

  怪獣を神からヤンキーにジョブチェンジさせ、徹底した娯楽性(と愛すべきツッコミどころ)でわたくしたちを楽しませてくれて、サンキューでした。サンキューです。

 

 

 シンギュラポイント、もしかしてこの映画の仕掛けをしっていたのか...?となる。なりますよね?

amberfeb.hatenablog.com