宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

誠実な職人芸——アニメ『ハイキュー‼︎』感想

終わりと始まり

 このところ、漫画があまりにもよかったのでアニメ版の『ハイキュー‼』をdアニメストアでみていました。出来がめちゃよくて感動ですよ。以下、感想。

 宮城県、バレーボールの古豪、烏野高校。そこに入学した小柄な少年、日向翔陽が、中学時代に一方的に叩きのめした「コート上の王様」影山飛雄とチームメイトになり、個性豊かな仲間たちとともに全国大会を目指して奮闘する。

 古舘春一による原作が『週刊少年ジャンプ』で連載開始したのが2012年で、このアニメが放映されたのは2014年。そこから『セカンドシーズン』(2015-6年)、『烏野高校 VS 白鳥沢学園高校』(2016年)、『TO THE TOP』(2020年)と、断続的にアニメ化が続いている。特段オリジナルの展開などを挟まず、原作の物語を忠実にアニメ化しているのだろうと推察するが、この1期目は原作の8巻、インターハイ予選の決着までが描かれる。

 原作の1話を忠実に映像化した第1話から、原作を見事に咀嚼して映像に落とし込んでいることがわかる。原作1話を読んだ時の感覚がありありと立ち上がってくるような25分あまりの時間は、これが原作に忠実なアダプテーションの見事な例だという感動があり、これは2003年版の『鋼の錬金術師』に匹敵するのではないかと感じた

 原作で感じるスピード感が映像でも少しも損なわれておらず、決めるべきシーンがしっかり決まっている安心感。この1期の見せ場は、「変人速攻」はもちろん、敵として立ちはだかる及川徹の強烈なサーブだろう。それがきちんと他を圧倒するものとして説得性を付与されていることが素晴らしい!。おもしろいマンガがおもしろいアニメになっている、その誠実な職人芸にめちゃうれしくなるんすね。

 キャラクターデザインは岸田隆宏。『魔法少女まどか☆マギカ』から『ジョジョの奇妙な冒険』第5部まで仕事の幅が極めて広いが、もはや岸田という書き手の個性を感じさせず、元のキャラクターデザインをうまくアニメのキャラクターに落とし込む手際はまさしく職人芸で、これが屋台骨のようにこのアニメを支えていると感じる。アニメーション制作をつとめるのはProduction I.Gで、1クール目のエンディングのコンテを『攻殻機動隊SAC』の神山健治が手掛けるなど、意外な固有名が出てくるので驚きがあります。

 『週刊少年ジャンプ』連載作品のアニメ化は、近年の『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『ヒロアカ』、この『ハイキュー‼』に先立つものであれば『黒子のバスケ』などなど、相当丁寧に企画されていると感じますね。『鬼滅の刃』は「原作に忠実」というのを誤解しているような気がしてわたくしは評価してないのだけど...。

 閑話休題。アニメをみてやや驚いたのは、主人公、日向翔陽の声が思ったよりも高かったこと。しかしこれって物語開始時点で中学生なんだからまあそんな不自然ではなくて、原作の最後の時点のキャラクターとのギャップがそう感じさせた要因かもしれません。しかし、このアニメ版が原作の結末まで描き切るならば、日向を演じる村瀬歩はなんと困難な仕事をつとめあげねばならないのか!といまから楽しみですね。

 原作の結末まで読んでからみると、日向くんはこんなへたっぴだったかとか、チームとしても全然洗練されてねえ!とか、結構驚くんですが、これがあの高みまで登り切るんだからすごいですよ。古舘春一がますます洗練させていく語りを追いこすくらい、素晴らしいアニメがつくられていくといいすね。わたくしはまず『セカンドシーズン』をみないといけないんだけど...。

 

 

amberfeb.hatenablog.com