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擬英国風と時の試練——『L/R -Licensed by Royal-』感想

L/R オリジナルサウンドトラック VOCAL SIDE

 『L/R -Licensed by Royal-』がdアニメストアで配信終了とのことで、なんとなく駆け込みでみていました。以下感想。

  英国を想起させる島国の王国、イシュタル。王室の意を受けて様々な任務に従事するエージェントであるロウ・リッケンヴァッカーとジャック・ヘフナーは、次期女王をめぐる陰謀に巻き込まれていく。

 2003年に放映された、『007』風味のスパイもの。主人公たちがコンビなのは『ナポレオン・ソロ』なんかを想起したりもする。ビリー・プレストンによるオープニング曲に象徴的にあらわれているが、ビートルズU2などのUKロックバンドの楽曲を明白にオマージュした劇伴が耳に強く残る。一方で、佐藤雅弘によるProduction I.G風味のキャラクターデザインはやや没個性的で平板。うえだゆうじ平田広明が軽妙な演技で実質を与えてはいるが、ルックの面では尖った魅力に欠ける印象。

  一話完結の挿話が展開される前半と、女王の即位をめぐる陰謀劇に巻き込まれる後半からなるが、各話スタッフに『プリンセス・プリンシパル』の橘正紀や、『花咲くいろは』『ストレンヂア』の安藤真裕、『DARKER THAN BLACK』の故・菅正太郎、『あの花』『鉄血のオルフェンズ』の長井龍雪などなど、その後華々しいキャリアを重ねることになる面々がそろっていて、そうした制作者たちの個性みたいなものが見出せる点が、放映からおよそ20年経った現在にあって見返したときのおもしろみかなと思う。

 一方で、そうした固有名を離れたところで色あせない魅力があるかといえば、それはキャラデザの弱さによるところやその後とくに作品展開がなかったことが大きいと思うが、やっぱりちょっと厳しい。知り合いでこの作品に言及している人はほとんどいないし、「忘れがたい作品」とまではいかないよなあ。擬英国風のかっこよさは、明らかに時の試練に耐えられていない。しかし、こういう作品に気軽に接することができるのは配信サービスのよいところだとは思います。