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映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

薄暗がりにうごめくもの——『パラサイト 半地下の家族』感想

パラサイト 半地下の家族(吹替版)

 Netflixで『パラサイト 半地下の家族』をみました。以下感想。

  富裕な一家の家庭教師として働くことになった貧しい青年。彼は家族を次々と、美術教師、運転手、家政婦としてその一家に潜り込ませてゆく。

 監督は『殺人の追憶』などのポン・ジュノアカデミー賞で作品賞・監督賞を勝ち得て大きな話題を呼んだ。『殺人の追憶』もそうであったように、真剣に行動する人間のおかしみのようなものを写し取るのが非常に巧妙で、かつ二つの家族を家という物体、とりわけその窓から眺める景色で鮮烈に対比してみせる手際に象徴されるように、画面の構図や運動によって抽象的なレベルの構図をこちらに提示するレイアウトは見事というほかはない。映画としてのすごみは『殺人の追憶』におよばないとも感じるが、こうした巧さが海を越えた土地にも訴えかける力をもったというのは納得できると感じる。

 『殺人の追憶』が、水路の下のくらがりを屈んで眺めやるシーンから始まったことを想起すると、この監督にはそうした隠された暗がりに対するオブセッションのようなものがあるのではないか、などとくだらないことを考えてしまう。この『パラサイト』のクライマックス、誕生日会の白昼の惨劇は、『グエムル』の序盤、怪物が初めて姿を現し人々を蹂躙するシーンとなんとなくオーバーラップする。『グエムル』では「アメリカの影」が色濃かったという気がするが、そうした政治的な布置とは無関係に、なにか地下の暗がりに、我々の「ふつうの生活」を脅かす何事かがうごめいている、という空想こそが、この作家の着想の根源なのかも、と思う。

 

 

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