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映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

80年代の夕陽——『トップガン』感想

トップガン(吹替版)

 『トップガン マーヴェリック』の予習にと『トップガン』を再見したので、感想書いておきます。

  アメリカ海軍の戦闘機パイロット、ピート・“マーヴェリック”・ミッチェル。規則やぶりをなんとも思わない、強烈な自負心を持つ男。偶然のアクシデントから、エリートパイロットを養成するための訓練学校、通称トップガンへと送り込まれることになった彼の、出会いと別れ。

 1986年に公開されたトニー・スコット監督による、戦闘機青春グラフィティ。同監督の出世作であるとともに、マーヴェリックを演じたトム・クルーズにとってもキャリアを決定づけた一作として広く知られる。還暦をむかえようとする2022年現在でも若々しさを残すトム・クルーズは、当たり前だがとにかく若い!当時20代なんだからそりゃ当然なんだけど、フライトジャケットを着てバイクで疾走されるともうとんでもなく画になるので、これは後知恵にすぎないんだけど、まさに一人で映画そのものを体現してしまうスターの風格がある。なにより撮影もドラマも、このトム・クルーズ(と戦闘機)に徹底的に奉仕しているのがえらい。こいつが映っていればドラマなんて刺身のつまみたいなもんですわ。

 主題化の「デンジャーゾーン」といい、軽めの電子音が印象的な劇伴といい、むせかえるような80年代のかおり!がして、わたくしはリアルタイムで知らないけど、まさに80年代ってこういう感じよねというのがパッケージされていると感じる。

 同時期に公開された『愛と青春の旅立ち』(1982年)とプロットの類似がつとに指摘されているが、再見して思ったのは映画・ドラマ版『海猿』ってほぼ『トップガン』じゃん、ということ(これもインターネット上で指摘されまくってるのでいまさらすぎるんだけど)。で、『海猿』の翻案っぽい雰囲気のケヴィン・コスナー主演『守護神』は、親子のドラマを焦点化して『トップガン』ぽさは希釈されてんですよね。

 そうしたある種のドラマの祖型みたいなものがむき出しになっている感じの、いい意味での芸のなさをカバーしているのが、先に述べたトム・クルーズの魅力とともに、夕陽が射したときの画面の見事な美しさだろう。俳優も戦闘機も、とにかく夕陽の場面で映えること映えること。しょうじき、もっと鑑賞がつらいと思ってたんですけど、そんなことなかったです。