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ジョブズ、モナリザ、金閣寺―—『ナイブズ・アウト: グラスオニオン』感想

ポスター/スチール写真/チラシ アクリルフォトスタンド入り A4 パターン22 ナイブズ・アウト グラス・オニオン光沢プリント

 『ナイブズ・アウト: グラスオニオン』をNetflixでみました。このところクソ忙しくて劇場に足を運べてないので、新作配信のありがたみを強く感じます。以下、感想。

 世界的な名声を誇る名探偵、ブノワ・ブランは、一代で世界的企業を築いた大富豪、マイルズ・ブロンの島で催されるパーティーに招かれる。マイルズと親しい各分野の著名人が集まり、マーダーミステリーに興じようとしていた。そこに、かつてマイルズとともに企業を立ち上げたが、方針の違いから切り捨てられてしまったかつての友人、カサンドラ・“アンディ”・ブランドがあらわれ...。

 ダニエル・クレイグ演じる名探偵が登場するシリーズの2作目。前作に続き、監督は『最後のジェダイ』のライアン・ジョンソンが務める。大富豪の遺産相続と「館」をめぐる古風なミステリ仕立ての軽快な娯楽映画だった前作同様、限られた人間しかいない孤島というシチュエーションは古典的なミステリを思わせるが、中盤以降で復讐劇と(思いもしなかった事件の)犯人捜しという趣向が明らかになり構図ががらっと変わる。名探偵があくまで狂言回しで、強い動機をもつドラマの主役が別に存在して...というのも前作同様。

 「アンディ」とよばれる腹心を切り捨てた億万長者というイメージはどうしたってスティーブ・ジョブズを連想しないわけにはいかないし、また自動車から宇宙産業までてがけるベンチャー起業家っていわれたら、いまやわが愛しきTwitterをめちゃくちゃなことにしてくれたくそ野郎を思い起こさずにいられない。この空疎なくそ野郎演じるエドワード・ノートンはその軽薄さが堂にいっていて、いや素晴らしいんだがファンとしてはやや複雑な気持ちになります。

 細かい描写の積み重ねで布石を打ち、それを見事に回収してみせる手際もお見事。万事休すの状態から、とんでもない暴挙で悪党を懲らしめる結末もお見事。まさか『イングロリアス・バスターズ』や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』、あるいは『薔薇の名前』的な無法な歴史修正をやってのけるとは、いやはや...。名探偵の推理パートが『スミス都に行く』ばりのフィリバスターなのもウケる。

 総じて、『最後のジェダイ』の復讐戦として体重が乗りに乗っていた前作ほどの強度はないとは思うんですけど、それはそれとして楽しい娯楽映画でございました。これが配信でみられるの、うれしい!