西村京太郎『消えたタンカー』を読んだので感想。
インド洋沖で、石油を満載した超巨大タンカーが沈没する。32名の船員のうち、救出されたのは6名。その一人である船長が不審な転落死を遂げたことを皮切りに、次々と殺害されてゆく生き残りの船員たち。警視庁には犯行を予告した手紙も届く。刑事の十津川は、ねらわれた船員の保護と、姿なき殺人者の逮捕を目指して奔走するが…。
1975年発表、十津川警部シリーズの4作目。わたくしは西村京太郎の小説って読んだことなくて(もしかしたらドラマはみているのかもしれないが)、なんとなく「読まなくていい作家」の枠に入っている人だったのだけど、パオロ・マッツァリーノがほめていたので手に取ったのだった。
で、この『消えたタンカー』、刊行から半世紀たった今でもサスペンスフルでおもしろい!殺し屋が次々と船員を仕留めていき、最後の一人でようやく十津川警部もターゲットとの接触がまにあって、沖縄で丁々発止の駆け引きとなるのだが、このあたりの外連味はさながら劇場版『名探偵コナン』といった趣。そういう種類の面白さなので、たとえば法月綸太郎のミステリのようなものを期待して読むと全然違う味ではあるのだが、しかしおもしろいことに変わりはない。
犯人もこんな殺し屋いるかよという感じではあるのだが、それでも最後は十津川が見事にその名を言い当ててみせて、結構爽快感があるし、ちゃんとフェアに情報を提示してくれていたこともわかったりして、感心した。冷血な殺し屋かと思いきや意外なところで足がつく…というのはある意味リアルなのかもね。
おりしもホルムズ海峡をタンカーが越えられない時分に、時宜を得た選書だったかもしれませんな。
