この夏のことは、忘れたくても忘れることなどできないと思う。
先月の。
読んだ本のまとめ
2019年7月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:3519ページ
ナイス数:106ナイス
https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly
■赤朽葉家の伝説 (創元推理文庫)
鳥取の片隅、第二次世界大戦直後のまだ神話の残り香が微かに漂う時代から、現代に至るまでの三代記。時代を取り扱う手つきは際立って優れているというわけではないと感じたが、予言された未来の謎を結末までひっぱりつつ、個別の挿話の楽しさで飽きさせない、見事な娯楽小説だと思いました。
読了日:07月01日 著者:桜庭 一樹
https://bookmeter.com/books/629397
■1970年転換期における「展望」を読む 思想が現実だった頃
1970年前後に雑誌『展望』に掲載された論文を、4人の編者が集め、それぞれ解説を付したアンソロジー。吉本隆明、真木悠介らのビッグネームから、素性もわからない主婦のルポまで載っている守備範囲の広さ。ある時代がここで終わり、そして我々のいまがまさに始まったのだと感じられる、ある時代の空気の結晶として、通読する意義のある本でした。
読了日:07月05日 著者:
https://bookmeter.com/books/1513584
■リラと戦禍の風
第一次世界大戦期の欧州。偶然から不死身の吸血鬼に見出された若者が、少女の護衛として魔物が跋扈するヨーロッパを駆け巡る。面白く読んだのだが、かなしいかな、この時代のヨーロッパを舞台に、異能の者の登場する小説を書かせたら佐藤亜紀というとんでもない天才と比較されるというかなしい宿命を背負わねばならず、本書は無論近年の研究も摂取して大いに健闘しているのだが、それは健闘の域にとどまるものでもあって、そういう意味では非常におしいなと思いました。
読了日:07月06日 著者:上田 早夕里
https://bookmeter.com/books/13609881

自由に生きるとはどういうことか―戦後日本社会編 (ちくま新書)
- 作者: 橋本努
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/11
- メディア: 新書
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■自由に生きるとはどういうことか―戦後日本社会編 (ちくま新書)
戦後、それぞれの時代において「自由」は、どのような意味づけをされてきたのか。思想潮流やサブカルチャーを眺めることでその変遷をあとづける。戦前以来の自由主義者たちの「規律による自由」、『あしたのジョー』的な自己否定と融解、尾崎豊の反規律訓練と胎内回帰、そして『新世紀エヴァンゲリオン』のちっぽけな自己の肯定。最後の章は、今読むとなんというか時代を取り逃がしている感じもするが、全体としては面白く読みました。
読了日:07月10日 著者:橋本 努
https://bookmeter.com/books/519687
■日本の百年〈1〉御一新の嵐 (ちくま学芸文庫)
1960年代に編集された、日本近代史の通史シリーズの第1巻。黒船来航から西南戦争までの期間を、さまざまな人々の声を拾い集めて、その時代の混沌としたありさまと、そのなかで秩序を立ち上げようとする姿とを描き出す。その編集方針によって本書の寿命は著しく伸びた、という気がしていて、通史でありながら史料集的な趣もあり、よい本です。
読了日:07月11日 著者:鶴見 俊輔
https://bookmeter.com/books/26388
■新海誠の世界を旅する: 光と色彩の魔術 (平凡社新書)
日本アニメ史の文脈から新海誠のフィルモグラフィを眺めるコンパクトな作家論・作家紹介のなかに、作品の舞台とされる場所についての旅行エッセイが時たま挿入される構成。『ほしのこえ』から『君の名は。』までを流れるようにたどり、そして公開直前の『天気の子』にもわずかに触れる。筆者も着目する新海作品と鉄道ないし東京/非-東京の対比については、僕も結構重要ではないかと思ってます。
読了日:07月18日 著者:津堅 信之
https://bookmeter.com/books/13997974
■大いなる眠り (ハヤカワ・ミステリ文庫)
筋と人間関係の錯綜具合はちょっと過剰に過ぎるのでは……みたいな気持ちがふつふつと湧いてくるのだが、それはそれとしてキャラクターの佇まいのぶっちぎりのかっこよさでぐいぐい読ますのがすごい。
読了日:07月18日 著者:レイモンド チャンドラー
https://bookmeter.com/books/8176549
■さらば、シェヘラザード (ドーキー・アーカイヴ)
ポルノ小説家がなんとか25ページの空白を埋めようと四苦八苦し続ける。書かれたものとしての虚構と、その虚構を生み出す現実とが入り混じる奇妙なテクストのおもしろみでぐいぐい読ます、よくできたメタフィクションだなー、という感じ。
読了日:07月25日 著者:ドナルド・E・ウェストレイク
https://bookmeter.com/books/12930387
■カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)
亀山訳では初読。米川訳となんとなく印象をくらべると、読みやすい(呼称の簡略化は正直ありがたい)が、わかりよいわけではない感じがします。場面場面の鮮烈さは米川訳の方がより印象的だったような。しかし無法におもしろい小説であることに疑いはなく、読むにあたっていくつもの選択肢があるのはすばらしいことだと思います。
読了日:07月28日 著者:ドストエフスキー
https://bookmeter.com/books/578786
近況
たどたどしい誠実さ――『新聞記者』感想 - 宇宙、日本、練馬
フィクションの世界と素朴な祈り――『天気の子』感想 - 宇宙、日本、練馬
あるいは次なる敗戦のために――映画『アルキメデスの大戦』感想 - 宇宙、日本、練馬
来月の。