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最悪の恐怖再び──『エイリアン:ロムルス』感想

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 『エイリアン:ロムルス』をみました。いや、大変いやな、素晴らしい映画でした。以下、感想。ネタバレしています。

 22世紀、劣悪な環境にある植民地惑星で労働で心身をすり減らしながら、合成人間の弟分、アンディと暮らすレインは、友人たちからある計画への協力を求められる。惑星の軌道上にある船から冷凍睡眠用のポッドを回収し、植民地惑星からの脱出を計画する彼らに巻き込まれたレインは、思いもよらぬ恐るべき事態に遭遇するのだった。

 『エイリアン』シリーズの最新作は、『ドント・ブリーズ』のフェデ・アルバレスを監督にむかえ、初代に回帰したかのごときシチュエーションホラーを現代風に洗練させた快作。宇宙で使い捨てられる労働者たちの姿は、『ブレードランナー』や初代『エイリアン』のような、リドリー・スコットの構想した未来世界の雰囲気を濃厚に漂わせ、冷徹な合成人間に翻弄されながら必死に状況に対処していくレインの姿は言わずもがな、リプリーをそこに重ねてみてしまう。エイリアンの質感も初代や『2』を想起させたが、これはどうもCGをあまり使わず撮影しているらしく、そのあたりのディテールのこだわりで新しくもどこか懐かしい、見事な嫌悪感を喚起する仕掛けになっていた。

 エイリアンとレインの対決のシークエンスのいくつかは明白に過去の作品を参照していて、『エイリアン』と『エイリアン2』を直前に予習していた甲斐があったというもの。フェイスハガーと閉所に閉じ込められるシチュエーション、エイリアンに拉致される仲間...等々の過去作品でみられたシチュエーションの参照がしばしばみられるが、一方で、エイリアンの血液が高濃度の硫酸であることを強調してピンチを生み出したり、またフェイスハガーを欺くため室温を上げ静かに進むくだり(『新感染』を思い出したが直接的には『ドント・ブリーズ』への目くばせでしょうか)など、新たな工夫やアイデアも随所にみられておもしろかった。とりわけ、無重力状態でエイリアンを屠った後、硫酸漂う空間を遊泳していくシークエンスのアイデアにはうなった。ここはさすがにワイヤーアクションとグリーンバックの合わせ技で撮ったのだろうか?

 既視感ある場面と新たな刺激でほどよくおもしろがらせたあと、最後の最後で最悪のクリーチャーが出現するのも憎い。ホラー映画において、あんまり殺せない=生存者となる確率が高いのは妊婦のキャラクターだと思っていて、だからこの『ロムルス』も結構予断をもってみていたところがあったのだが、それを見事に裏切る最悪の出来事が起こるので、ほんとうに最悪でした。ほめています。

というわけで、たいへんおもしろくみました。