『ぽんのみち』をだらだらみていました。なんとなく断続的に、半年以上かけて視聴したので記憶はあいまいですが、以下感想。
家で騒いで母親の怒りを買い、家の外に居場所を探していた女子高生、十返舎なしこは、以前父親が経営していた雀荘の使用許可を得、そこに友人たちとたむろするようになっていく。
雀荘を舞台にした異色の女子高生日常アニメ。アニメオリジナルの企画で、キャラクター原案は『五等分の花嫁』の春場ねぎ、監督は『波よ聞いてくれ』や『炎炎ノ消防隊 弐ノ章』の南川達馬、アニメーション制作はOLM。広島県尾道市を舞台にしていて、『かみちゅ!』の記憶を喚起する尾道アニメでもある。主人公のなしこも広島弁を使い、演じる前田佳織里は広島弁ネイティブではなさそうだが、くだけた感じがいい塩梅の親しみやすさでキュート。「見るしかなしこちゃんや!」のフレーズは妙に耳に残り、味わいがある。
モチーフは麻雀だが、麻雀をやること以上に元雀荘という居心地のいい場所で駄弁ることを楽しむ感じであり、その意味では『けいおん!』的なゆるさを感じさせる。『けいおん!』は学校の部活を舞台にしていたがゆえに、進路選択なんかのどちらかといえばシリアスなイベントも起こったが、この『ぽんのみち』は(主人公たちは女子高生であるにもかかわらず)学校の存在感は希薄で、徹頭徹尾雀荘や尾道周辺で遊び続けるので、季節の移り変わりは描かれるものの終わりなき日常感が強い。
最終話で、電動雀卓が壊れたことで、5人の足も雀荘から遠のき、やや疎遠になっていく...という展開になり、それまでのトーンからはびっくりするくらい感傷的になる(これが映画だったら時間を数年後にジャンプさせてエピローグ...みたいに収まりそう)が、たかが雀卓の故障なので、業者に修理してもらい5人のユートピアはこれからも続いていくことを示して幕。
このアニメの美点はだらだら集まって過ごすことの楽しさを、まさにだらだら過ごす女の子たちを映し続けることで描いている点で、そこに別段強烈な主張も人生の教訓もあるわけではないが、その教訓のなさに心地よさを感じた。また無理にキャラクターの個性を際立たせようとする展開もなく、そのあたりの起伏のなさがだらっとした安心感につながっているのかもしれない。