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照らされざる暗闇と終わらない物語——『世界征服〜謀略のズヴィズダー〜』感想

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 『世界征服〜謀略のズヴィズダー〜』をみました。もう放映から6年もたっていることに驚きです。以下感想。

  世界は征服されたがっている。世界征服を志す秘密結社が、東京都西ウド川市でうごめく。

 監督は『DARKER THAN BLACK]』の岡村天斎、シリーズ構成には岡村とともに、未だカルト的人気を誇る『Forest』の星空めておがクレジットされている。キャラクター原案は黒星紅白。やわらかな印象のキャラクターは6年程度ではまったく古びておらず、アニメで描画されると、『NEW GAME!』の得能正太郎や『小林さんちのメイドラゴン』のクール教信者など、黒星紅白フォロワーともいうべき存在がここ10年来アニメ界である種の影響力を保持しているのだなと改めて実感する。久野美咲の舌足らずな演技によって魂を与えられた星宮ケイト=ヴィニエイラの強烈な存在感は、ドラマとは別の次元で作品を牽引する強度をまとっている。

 作劇については、星空めておの資質よるものなのかわたくしには判断がつかないが、やや個性薄めの主人公の少年のまわりに、それぞれ明確にある種の「属性」を帯びたヒロインたちが配される、美少女ゲームを想起させる形式が見てとれる。あるいは一巻完結(に結果的になってしまった類)のライトノベルを髣髴とさせる、といっていいかもしれない。キャラクターの巻き起こすコメディはほどほどに楽しく微笑ましい。また、事態が深刻になりきることを軽やかに拒否する作劇は、彼女の征服の道行きにシリアスな死は似合わないとでもいわんばかりである。

 魅力あふれるキャラクターたちはそのバックボーンにそれぞれ語るべき豊かなドラマを残しているような趣があり、この『世界征服』というアニメは、ひとまずその構成力を使い尽くすことなく終わってしまったという気がする。構成力を使い果たしてなおだらだらと延命するよりは幸福かもしれないが、ズヴィズダーの光が照らすべき暗闇がまだまだ残っていながら、続編の噂は(あるいはそれを望む声も)寡聞にして聞かないことに、一抹のさみしさを感じたりもする。

 しかし、そうした語り残した暗闇への未練がましさなど欠片もないのが、この作品のあるいは美点であるのかもしれない。だからこそ、この物語がひとまず終わり、そして彼女たちの終わらない物語が始まることを喜んでもいいのではないか、という気がいまはしている。そうした喜びを与えてくれるアニメがそうあるとも思われず、その意味でこの『世界征服〜謀略のズヴィズダー〜』は愛すべき作品だと思うのだ。

 

 

 

 

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