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アイドルのリアル、リアルのアイドル────『Wake Up, Girls! Beyond the Bottom』感想

続・劇場版 後篇 「Wake Up, Girls! Beyond the Bottom」(dアニメストア)

 『Wake Up, Girls! Beyond the Bottom』をみたので感想。

 東京での活動で思わしい結果を得られなかったWake Up, Girls!。ふたたび拠点を仙台に戻し、アイドルの祭典に向けて活動を続けていく。一方、アイドルの頂点、I-1clubはCD売り上げの争いを経てセンターが交代。センターの座を失った岩崎志保は、福岡で新たに結成されるアイドルグループ、ネクストストームに移籍し、再起を図る。三者が激突するアイドルの祭典、頂点をつかむのはどのグループなのか。

 2015年公開、前編『青春の影』の続編。山本寛はその後のテレビシリーズでは監督を辞し関与しなくなるので、山本寛の作品としての『Wake Up, Girls!』はこれで最後ということになる。

 この『Beyond the Bottom』では前編での挫折から心機一転、アイドルの祭典に向けて奮闘するWake Up, Girls!の面々が描かれていくので、全体のトーンとしてはポジティブ。『七人のアイドル』時の女社長資金持ち逃げ事件の真相も(観客には)明かされるが、いまさら株を上げられてもね…とやや鼻白む思いだった。I-1clubの岩崎が九州に拠点を移すことになる展開は、AKB48指原莉乃のスキャンダルを経ての対応を思い起こしたりしたし、ここでもアイドルを美化せずに描くという作品の方針はぶれていないのだなとは思った。

 一方で、アイドルの祭典で頂点をとってしまう結末はそうしたアイドルのリアルを描く方針と齟齬があるような気がするし、ここで勝てないほうがWUGらしさが出ているという気もした。光塚歌劇団を目指していた久海菜々美の葛藤とか、正直いまさら劇場版でやるのかよと思ったし、一本の映画としてのまとまりには欠けていると感じる。

 山本寛は『Wake Up, Girls!』の一連の作品を世に出すにあたって相当の苦労をしたのだと思うし、それがにじんでもいるのだが、結局のところ、そうした苦労に見合った作品にはなっていないというのが全体の印象で、それもまた山本寛らしさなのかもしれない。

 

 

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